2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23580215
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
真坂 一彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (60414273)
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Keywords | クロマツ / 水ストレス / 衰退 / 生理生態 / 針葉 |
Research Abstract |
本研究では、海浜に植栽されたクロマツの衰退原因の一つである過湿立地が、クロマツの生理生態に与える影響を評価するため、針葉に着目し、実験的にクロマツポット苗を浸水処理し、苗畑に植栽したクロマツ苗の針葉の生理生態と比較した。このとき、灌水しないポット苗(乾燥処理)も設置して比較対象とした。そして、過湿による衰退と考えるクロマツ海岸林造成地のクロマツの針葉について、比較的健全と考えられるクロマツ林の針葉と比較した。 浸水処理したクロマツ苗は水分を奪われないよう2年生葉を著しく落葉させ、さらに新たな葉(一年生葉)の着葉量を減少させた。クロマツ苗の根重(絶乾重)は無処理>乾燥処理≧浸水処理の順で大きく、浸水処理では根からの吸水が劣っていることが示唆された。重量法によって推定した浸水処理クロマツ苗の針葉の気孔蒸散速度およびクチクラ蒸散速度は、無処理の苗より有意に大きく、葉から水分が奪われやすい状態であることが明らかになった。光合成速度に関わる葉のクロロフィル含有量(a+b)は無処理>乾燥処理>浸水処理の順で大きかった。葉の窒素含有量も同様に、無処理>乾燥処理>浸水処理の順で大きい傾向が認められた。炭素安定同位体比(δ13C)を処理間で比較すると、δ13Cは無処理と浸水処理で差が認められず、乾燥処理におけるクロマツ苗の針葉のδ13Cは他の2処理と比較して有意に低かった。このことから浸水処理した個体の気孔は解放傾向がある、つまり水分が奪われやすい状態にあることが示唆された。 以上から、浸水処理のクロマツは水ストレスを軽減するために葉量を減らすものの、葉から水分が奪われやすい状態にあり、それによって衰退し、枯死に至ることが明らかになった。針葉長と葉量、重量法による蒸散速度を測定することで簡便に衰退に至る水ストレスを受けているか評価が可能である。
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