2011 Fiscal Year Research-status Report
模擬木を用いた樹冠遮断メカニズムの解明に関する研究
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23580216
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
村上 茂樹 独立行政法人森林総合研究所, 気象環境研究領域, 試験地長 (80353879)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 樹冠遮断 / 林分構造 / 飛沫 / 蒸発 / 林内雨 |
Research Abstract |
具体的な成果の内容<実験1> 内寸177.6cm角のトレイに樹高60cm、樹冠直径30cmの塩化ビニール製模擬木25本を格子状に配置し(トレイ1と呼ぶ)、自然降雨の下で林内雨量を測定した。樹冠遮断量は林内外の雨量の差から算出した。測定開始から約1ヶ月間の降雨イベントは新潟福島豪雨を含む4回のみで、雨量(林外雨量)、樹冠遮断量、遮断率はそれぞれ498.4mm、38.9mm、7.8%であった。当初、10数%以上の遮断率を予想していたが、実際にはこれよりもかなり小さくなったのでトレイ1の模擬木を41本に増やした。これにより、遮断率は10数%に増加した。<実験2> 実験1で模擬木を41本とした場合の樹冠遮断率は、実際の森林での値に近いことが確認できた。そこで、トレイ1のほかに林分構造の異なる2つの林分(トレイ2とトレイ3)を併設して実験を継続した。トレイ2は、トレイ1で用いた模擬木に30cmの棒を継ぎ足して樹高を90cmとし、これをトレイ1と同様に41本配置したものである。トレイ3は、樹高150cm、樹冠直径75cmの模擬木を内寸360cm角のトレイに、トレイ1と同様に、41本配置したものである。約1ヶ月半の測定期間における雨量は322.3mm(降雨イベント数19回)で、樹冠遮断量、遮断率はトレイ1~3においてそれぞれ、38.9mm、12.1%、53.0mm、16.5%、46.4mm、14.4%であった。成果の意義実験2におけるトレイ1とトレイ2の違いは、トレイ2の樹高が30cm高い点のみであるが、遮断率はトレイ2のほうが4.4%大きくなった。トレイ2では樹高が最高のトレイ3よりも遮断率が高いことから、枝下高が樹冠遮断を支配している主な要因であると考えられる。これは新たに得られた知見であり、今後の樹冠遮断研究の発展に寄与するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
林内雨観測装置の製作、樹冠遮断の観測、微気象観測、樹冠遮断の算出のすべてにおいて、ほぼ予定通りに目標を達成することができ、林分構造の異なる3つの林分(トレイ)での樹冠遮断観測に成功した。計画の詳細については以下のとおり若干変更した。(樹冠遮断の観測) 当初は「各林分内の単木重量を電子天秤で観測」する予定であった。しかし、棒を継ぎ足して樹高を高くしても樹冠長が同じなら降雨終了時に樹体に付着している雨水の量はほとんど同じと考えられる。このため、トレイ1では単木重量測定を行ったが、これと樹冠長が同じであるトレイ2では行わなかった。また、予算配賦遅れのため、トレイ3の単木重量計測装置の納入が遅れた。このためトレイ3の単木重量測定は次年度から行う。予備実験の段階で遮断率が予想よりもかなり小さかったことから(研究実績の概要、<実験1>を参照)、遮断率の増加が期待できるより大きな模擬木で実験を行う必要性を感じた。このため、樹高150cmの模擬木を一辺360cmのトレイ3に配置して実験を行った。(微気象観測) 温湿度の測定は各林分で行う予定であった。しかし、当初購入を予定していた湿度センサーは、安定性に問題があることが判明したため、より高価な湿度センサーを1台のみ購入した。これをトレイ1の樹冠上に設置し、既存の湿度センサー(芝生上に設置)の測定値と比較したところ、両者の降雨中の湿度は誤差の範囲で一致した。林分ごとの温湿度の差が検出できるかどうかは疑わしいので、各林分上での温湿度測定を行うかどうかについては今後の結果を調査・検討して対応する。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画どおりに実験を進めるが、以下の改善を行う。所内で研究実績を発表したところ、林縁木が雨水をトレイの外にはじき出して林内雨量が過小評価されている可能性が指摘された。そこで、林縁木1列分を除いた林内雨を集水できるようにトレイを改良して実験を継続する。これにより、研究実績の概要で述べた「新たな知見」の信頼性を高める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、研究実績を学会発表するための旅費、倉庫に保管してある実験装置を再度設置・調整するための経費、模擬木を更新するための消耗品費、模擬木の林分構造を変化させるための作業経費、必要に応じて計測機器を購入する経費等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)