2012 Fiscal Year Research-status Report
模擬木を用いた樹冠遮断メカニズムの解明に関する研究
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23580216
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
村上 茂樹 独立行政法人森林総合研究所, 気象環境研究領域, 試験地長 (80353879)
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Keywords | 樹冠遮断 / 林分構造 / 蒸発 / 林内雨 |
Research Abstract |
樹高が樹冠遮断に及ぼす影響を検討するため、プラスチック製の棒及び金属パイプを用いてトレイ2,3の幹を延長し、樹高をそれぞれ90cmから120cm、150cmから240cmへと高くした。その結果、トレイ2,3の樹冠遮断率はそれぞれ16.5%から19.7%、14.4%から20.0%へと増加した。すなわち、23年度の結果に引き続き樹高の増加とともに樹冠遮断率が増加する傾向が確認できた。 次に、葉量(林分密度)が樹冠遮断に及ぼす影響を検討するため、トレイ2,3の林分密度を41本/(トレイ)から25本/(トレイ)に減らす間伐を行った。その結果、トレイ2では樹冠遮断率が19.7%から22.8%へと増加し、トレイ3では20.0%から13.8%へと減少した。間伐を行うと、林分構造の違いによって樹冠遮断は増加する場合も減少する場合もあることが示された。なお、トレイ1ではすべての実験を通して樹高も林分密度も一定としたため、樹冠遮断率は12.1%~13.3%となり一定値を示した。 わずか樹高65cm~240cmの模擬木林分においても、実際の森林と同程度の樹冠遮断率が測定されたことは、これまでの常識を覆す結果である。しかも、その林分構造を変化させることによって樹冠遮断率が変化することがわかり、今後の樹冠遮断メカニズム解明に向けた新たな手法として有効であるといえる。 一般には葉量が多いほど樹冠遮断も多くなると考えられてきたが、間伐によって樹冠遮断が増加するケースが見られた。しかも、逆に減少する林分もあったことは、葉量や樹高以外の林分構造が樹冠遮断を支配していることを意味している。この新たな課題が浮かび上がってきた点は予期せぬ成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、水収支的に測定した樹冠遮断量と微気象データから算出される樹冠表面からの蒸発量の差から、飛沫蒸発量を算出する予定であった。しかし、樹冠上の微気象データと芝生上の微気象データを比較したところ、両者にほとんど差が無いことが分かった。このことは、微気象的なアプローチによって樹冠遮断の解析を行うことはほとんど不可能であることを意味している。 そこで微気象解析は省略することとし、その代わりに当初は25年度に行う予定であった樹冠遮断の葉量依存性の実験を24年度に前倒しで行った。これらの状況を総合的に勘案し、平成24年度はほぼ予定通りの達成度であると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
微気象データの収集は今後も行うものの、水収支に基づいた樹冠遮断測定結果の解析に重点を置く。 これまでの実際の森林における研究から、樹冠遮断は夏にピークをもつ季節変化を示すことが知られている。25年度は林分構造を変化させずに測定を継続し、季節変化がとらえられるかどうかに着目して実験を行う。 トレイ1,2は地表面から1.2mの高さに設置してあるが、トレイ3だけは地表面に設置してある。この違いが間伐の際に逆の傾向(トレイ3では樹冠遮断が減り、トレイ2では増加)をもたらした可能性がある。このため、トレイ1,2を地表面に設置して実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
樹冠遮断観測システムの撤収作業が予定よりも低価格で実施できたので、経費の一部が次年度に繰り越しとなった。 繰り越し分も含めた経費は、研究成果を国際学会で発表するための旅費、倉庫に保管してある実験装置を再設置・調整するための経費、計測装置や消耗品を購入するための経費等に使用する。
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Research Products
(3 results)