2012 Fiscal Year Research-status Report
水欠乏により大量に作られるポプラのLEAタンパク質の機能解明と機能改変
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23580217
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
西口 満 独立行政法人森林総合研究所, 生物工学研究領域, 主任研究員 (80353796)
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Keywords | ポプラ / LEA / 環境ストレス / 遺伝子組換え / 耐塩性 |
Research Abstract |
本課題では、水欠乏により大量に作られるポプラのLEAタンパク質(late embryogenesis abundant protein、後期胚発生蓄積タンパク質)について、その生理学的な役割と生化学的な性質を明らかにすること、および、突然変異により性質を変えた機能改変型LEAタンパク質を作り出すことを目的としている。 本年度は、LEAタンパク質を過剰発現、あるいは発現抑制する遺伝子組換えポプラを作成した。作成した遺伝子組換えポプラは、選抜用抗生物質のカナマイシンに耐性を示した。遺伝子組換えポプラからゲノムDNAを抽出し、PCR法でカナマイシン耐性遺伝子の存在を調べ、遺伝子組換えが起こっていることを確認した。過剰発現ポプラからRNAを抽出し、導入したLEAタンパク質の発現量を調べた結果、発現量は非組換えポプラの100倍から200倍に達していた。通常の育成条件では、組換えポプラと非組換えポプラにおいて、形態の違いは見られなかった。 また、昨年度まで、LEAタンパク質の性質を調べるため、複数のLEAタンパク質の遺伝子を大腸菌で発現させ、高塩培地での大腸菌の増殖の回復を調べていたが、本年度はより長時間の増殖特性を調べた。その結果、24時間まではLEAタンパク質は高塩培地での大腸菌の増殖を促進させたが、その後は頭打ちになり、36時間以降はLEAタンパク質を発現していない大腸菌と同程度になった。すなわち、LEAタンパク質は、高塩環境における細胞の初期適応性を高めることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に従った本年度の達成目標は、LEAタンパク質の遺伝子をポプラに導入し、LEAタンパク質の量を変えた遺伝子組換えポプラを作ることだった。昨年度から始めた遺伝子組換えポプラの作製は、過剰発現ポプラ、および発現抑制ポプラについて、それぞれ10個以上の遺伝子組換えポプラを得ることに成功した。導入遺伝子についても、PCR法で確認済みであり、次年度に、乾燥ストレス(水欠乏)耐性に関する評価試験が可能な状態である。 また、大腸菌にLEAタンパク質のcDNAを導入し発現させた場合の、高塩濃度培地における大腸菌の増殖を詳細に解析した結果、LEAタンパク質が、高塩環境における細胞の初期適応性を高めることも明らかにしており、研究の達成度については、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
LEAタンパク質の遺伝子を導入して作出した遺伝子組換えポプラについて、水分を欠乏させた(乾燥ストレス)状態にし、ポプラの枯死などを判定基準に、導入したLEA遺伝子の機能を推定する。 ポプラのLEAタンパク質の遺伝子(cDNA)から、PCR法により、様々な突然変異をもつ変異型LEAタンパク質遺伝子群を作る。この変異型遺伝子群を大腸菌に導入して、高い塩濃度や高温で生育してくるものを選抜する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰り越しが生じた理由は、昨年度の理由と同様に、遺伝子組換えポプラの作出および解析に伴って実験量が増えており、実験補助員(非常勤職員)の謝金(賃金)が増額となる見込みがあったため、本年度も節約に努めた。
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Research Products
(2 results)