2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒノキ人工林としての繰り返し利用が林地土壌と成長量に及ぼす影響の評価
Project/Area Number |
23580218
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
酒井 寿夫 独立行政法人森林総合研究所, 四国支所, グループ長 (90353698)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ヒノキ人工林 / 2世代目造林 / 土壌変化 / 土壌生産力 / 地位指数 |
Research Abstract |
日本では1900 年前後に大面積の造林が行われ、現在これらの多くが2世代目となっている。ヒノキ人工林は40 年生まで林床植生が発達せず表土が移動しやすいことや土壌が酸性化しやすいという知見もあることから、世代を重ねることで林地土壌生産力の低下を懸念する意見が多い。本研究はこうした点を明らかにすることを目的としている。 今年度は、既往の井上ら(林業試験場研究報告258、1973)の調査林分を確認するとともに、調査当時のスギ・ヒノキ林における表層土壌(A層もしくはA1層)の化学特性(pH、Ca飽和度)と成長の関係について新たに解析を加え、第1世代目のヒノキ造林の影響について検討した。 井上らの調査は四国太平洋側の須崎・窪川地域(海抜80~700m)、中央部山地の本山・西条地域(海抜330~1080m)のスギ林(73地点)、ヒノキ林(42地点)で行われた。出現した土壌のほとんどが褐色森林土で、スギ林では乾性から湿性(BB、BC、BD(d)、BD、BE)、ヒノキ林では乾性から適潤性(BA、BB、BC、BD(d)、BD)のデータが得られていた。井上らの解析によりスギ、ヒノキの成長には表層土壌のpH、Ca飽和度、C/Nとの関連していることが明らかとなっているが、今回さらなる解析により、スギの樹高成長量は海抜高が高くなるほど低くなることがわかった。このため海抜高の影響を加味して全林分を対象に解析を行った結果、ヒノキ林の表層土壌pHがスギ林よりも低い傾向にあること(有意差あり、p<5%)、ヒノキ林の表層土壌の窒素含有率がスギ林に比べて明らかに低いこと(有意差あり、p<1%)などが見いだされた。ヒノキはやや乾燥した貧栄養な場所でもある程度良好な成長を見せる樹種であるが、潜在的に土壌を貧栄養に変化させている可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査については、予備調査だけにとどまり、本格的な調査をスタートできなかった。この点については若干遅れ気味であるが、既往の土壌調査情報の整備については予定以上に進展し、これにより研究達成目標をより明確にすることができた。以上の理由から、研究は(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒノキ人工林として繰り返し林地を利用していくことが土壌に及ぼす影響について、より信頼できる結果を得るためには、過去に土壌調査が行われた林分だけでなく、その周囲の林分についても補足調査を行い、なるべく調査地点を多くすることが望ましい。このためペース配分に注意しながら、計画的に調査を進めていくようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究期間内に、当初予定の研究目標を達成するには、土壌サンプルの調整(サンプルの乾燥、根と礫の分離)から分析に至るまでの人的な補助体制を構築することも重要である。次年度は、本格的な土壌調査を開始するとともに、研究体制の整備にも予算を投入することを予定している。主な支出項目は以下のように考えている。(1)調査のための出張旅費(2)土壌サンプル調整および分析・実験補助のための人件費(3)分析に係わる消耗品等の購入費
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Research Products
(1 results)