2011 Fiscal Year Research-status Report
セルロース誘導体の潜在特性を引き出す化学修飾と配向制御による光・電気的機能発現
Project/Area Number |
23580228
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺本 好邦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40415716)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | セルロース / 分子修飾 / 配向制御 / 機能材料 |
Research Abstract |
工業的に生産されシンプルな構造を持つセルロース誘導体を対象として、分子修飾とプロセッシングにより光学・電気的機能材料に変換するための試料調製と測定・解析を行い、以下の成果を得た。1. 光学的機能材料セルロースアセテート(CA;置換度2.15)をブロモイソブチリル化してマクロ開始剤を調製した。次いで、マクロ開始剤を出発として原子移動ラジカル重合(ATPRP)によるメタクリル酸メチルのグラフト共重合を行い、枝鎖としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)が導入された試料を得た。いずれの試料についても、定量13C NMRにより分子構造を明確化することができた。示差走査熱分析(DSC)の結果、非相溶なCAとPMMAが緊密に複合化されていること、並びにPMMA導入によりCAは可塑化されることが判った。蛍光偏光法により、延伸に伴う分子配向挙動を調査したところ、PMMA導入に伴いグラフト体としての分子配向性は低下することが判った。延伸配向試料の光学異方性はPMMAの導入量によって変化することが判った。2. 電気的機能材料シアノエチルセルロース(CyEC)を出発として直鎖脂肪酸エステル化並びにフェニルエステル化を行い、分光法により分子組成を定量した。側鎖結合部位による熱的性質の差異を明らかにするために、直鎖エーテル化にも着手した。ただし、エーテル化触媒のアルカリがシアノ基の変性を招くため、まずCA出発で直鎖エーテルを調製し、次いでシアノエチル化を行った。エステル系についてはDSCと広角X線回折測定により、分子のパッキング状態にエステル側鎖が及ぼす影響を調査し、出発のCyECの結晶構造はバルキーな側鎖を導入した場合にもある程度残存することが判った。導入側鎖含有率の増加に伴い、誘導体の比誘電率は低下した。3. 上記1と2に関連したグラフトポリマーの構造および熱特性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学機能材料については、ATRPによるPMMAのグラフト共重合と生成物の分子構造のNMRによるキャラクタリゼーションに成功し、延伸に伴う分子配向性と光学異方性の変化を含めた成果発表も為し得ていることから、きわめて順調に進展しているといえる。後者の電気的機能材料については、CyECエーテル誘導体の調製に時間を要したものの、脂肪族エステル、フェニルエステル、ならびに脂肪族エーテルの調製方法を確立し、側鎖結合部位の構造の差異が及ぼす影響を相互に比較する態勢が整いつつあるのは大きな収穫である。よって、本研究課題は総じておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
光学機能材料に関しては、既に調製が成功した系について予定通り性能の精密評価を行うとともに、光学異方性をより微細に制御できるような分子設計を行う。電気的機能材料に関しては、CyECエーテル誘導体の熱特性を体系化して、適切な延伸配向プロセス条件を探求すると共に、各誘導体の濃厚溶液が発現する液晶状態を詳細に調査する。分子鎖全体とシアノ基の配向性が、バルク体としての電気物性にどのように影響するのかを明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度と同様に、薬品類、ガラス器具類等の消耗品と、国際会議出張旅費を含めた成果発表費用に使用する。
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Research Products
(8 results)