2011 Fiscal Year Research-status Report
石油分解菌を担持させた新規な浄化材を用いる高濃度石油汚染土壌浄化法の研究開発
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23580230
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橘 燦郎 愛媛大学, 農学部, 教授 (10112319)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 原油汚染浄化 / 浄化技術 / 石油分解菌 / 多環芳香族炭化水素 / 分解酵素 / 担体 / アスファルト |
Research Abstract |
石油分解菌を担持させた新規な浄化材を用いて、以下の結果を得た。1.石油分解菌によるPAHs、原油、アスファルト等の分解:石油分解菌(RT-10)を用いて、PAHs(クリセン、ベンズピレン、フェナントレン)(濃度10ppm)の分解を行い、各々約20%、90%、60%分解(15日培養)出来ることを見出した。また、石油分解菌(NG007)は高濃度(1000,15000ppm)の原油(アスファルト)を液体培地中で各々約50%分解(30日培養)できること、アスファルト汚染土壌(15000ppm)を約70%浄化(30日処理)できることを見出した。さらに、石油分解菌は原油成分(炭化水素部、芳香族部、NSO部、アスファルト部)いずれも分解できることも見出した。2.石油分解菌を担体に担持させた浄化材による浄化への影響:石油分解菌を油吸収能のある担体(一種の高分子ポリマー)に担持させると天然高分子材料(一種の)に担持させた場合よりも、浄化率が約20%増加することを見出した。しかし、担持法の更なる検討が必要と考えられた。3.形状の異なる浄化材を作製して検討したが、石油分解菌が担体マトリックス中で成育できるスペースが少ない場合は、浄化率が約25%低下することを見出した。4.数種の石油汚染土壌を用いる浄化材による汚染浄化の検討:石油汚染土壌(水田土壌)の浄化に関与する数種の酵素を明らかにするとともに、栄養源(窒素源、炭素源)や界面活性剤及び酵素賦活剤添加が浄化に及ぼす影響を明らかにした。そして、浄化条件を明らかにした。また、この条件を基に一種の石油分解菌を用いて石油汚染海岸土壌(弱塩基性で高塩類濃度の砂質土壌)(1000ppm)の浄化を行い、約50%浄化(60日処理)できることを見出した。また、土壌中での菌の成育状況について調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は全て実施し、幾つかの新規な成果も得られたので、順調に研究は進展していると考えている。低濃度の原油汚染土壌を浄化できることを見出した。また、液体培養により、分解率は高くないが、高濃度の原油も分解できることを見出した。この結果は、高濃度原油汚染土壌が浄化可能であることも見出した。さらに、高濃度の原油汚染土壌を浄化できることも見出した。これらの成果を基に、高濃度原油汚染土壌の浄化についてさらに検討していけば、汚染土壌の浄化法が開発されるものと考えている。しかし、幾つか次年度に検討を要する課題も認められた。分解菌の担持法については、更なる検討が必要と考えている。土壌中での分解菌の成育状況では、浅い部分での成育は進むが、少し深くなると菌の成育が遅くなることが見られた。これの改善を検討する必要があると考えている。また、塩基性土壌での浄化率の向上も検討する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は下記のことを実施する予定である。(1)石油分解菌による汚染浄化、栄養源の添加が浄化におよぼす影響解明:石油分解菌を担持した浄化材を用いて、難分解性の原油(アスファルト)が浄化できたので、高濃度原油(アスファルト)汚染土壌の浄化について、浄化条件を精査しながら浄化法の検討を行う予定である。また、栄養源の濃度や種類を変えこれが浄化におよぼす影響を明らかにして、さらなる浄化率の向上を試みる。さらに、分解菌の担持についても検討する予定である。海岸汚染土壌の浄化についても検討を行い、浄化率の向上を目指す。(2)分解菌の成育状況の調査:土壌中での分解菌の蔓延速度を速める検討を行う。特に、垂直方向の成育を速める方法の検討を行う。空気導入や分解菌の添加場所を検討して、分解菌の蔓延速度を速める方法を調べる。(3)浄化における石油成分(原油成分)の動態調査:浄化の経時変化を調べることにより、原油成分の動態を調べ、これが浄化におよぼす影響を明らかにする。また、分解菌が産出する分解酵素活性と原油成分の動態との関係を見出す。 昨年度は研究計画をほぼ遂行できた。しかし、幾つかの検討事項も見出されたので、今年度の研究計画に含めて検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究計画における研究費の使用計画は下記のように行う予定である。1.石油分解菌による汚染浄化、栄養源添加が浄化におよぼす影響解明:選抜した石油分解菌を担持した浄化材を用いて、高濃度原油(アスファルト)汚染土壌の浄化を行う。この場合に、栄養源を添加して汚染浄化を行い、浄化における栄養源添加の影響を明らかにする。分解菌による浄化を行う場合、浄化率を調べるためには、汚染土壌の抽出、抽出物の分離分析などの操作を必要とするので、有機溶媒、有機試薬、分離用のカラム用シリカゲルが必要である。さらに、GLCやGC/MSでの分析定量では試料の精製が必須のため、カラム用シリカゲル等が必要となる。これらも購入する予定である。また、浄化時に分解菌が産出する酵素活性を調べ、酵素活性を高める方法を見出すことも浄化率向上に必要である。そのため、酵素活性測定用試薬や基質等を購入する予定である。さらに、海岸汚染土壌を浄化するためには、海水条件下で生育する分解菌による浄化法の検討が必要である。そのための浄化法の検討も行うので担持法の更なる開発を行うための試薬の購入も行う予定である。2.分解菌の成育状況調査:分解菌の成育が原油汚染土壌の浄化には必須である。昨年度の結果から、土壌中で垂直方向の成育速度が土壌が深くなる程遅くなるので、空気の導入等を行い、成育速度を改善することを検討する。そのため、エアポンプやエアフィルター、チューブ等の購入を予定している。3.浄化における石油成分の動態調査:浄化時に原油成分がどのような変化をするのかを調べる。浄化時に汚染土壌中の原油成分を経時的に調べ、経時変化を明らかにする。そして、浄化率との関係、酵素活性の経時変化と浄化率の関係を調べる。原油成分の経時変化を調べる場合には、1と同様に多くの有機溶媒、試薬、カラム用シリカゲル等が必要である。これらを購入する予定である。
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Research Products
(5 results)