2012 Fiscal Year Research-status Report
石油分解菌を担持させた新規な浄化材を用いる高濃度石油汚染土壌浄化法の研究開発
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23580230
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橘 燦郎 愛媛大学, 農学部, 教授 (10112319)
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Keywords | 原油汚染浄化 / 浄化技術 / 石油分解菌 / 多環芳香核炭化水素 / 分解酵素 / 担体 / アスファルト |
Research Abstract |
石油分解菌を担持させた新規な浄化材を用いて、以下の結果を得た 1.石油分解菌を用いた汚染土壌の浄化、分解菌の成育状況調査について:石油分解菌(NG007)は高濃度(15000,30000ppm)原油(アスファルト)汚染土壌を浄化できることを見出した(浄化率:68,62%(30日培養;70,64%(120日培養)。また、2種の分解菌の混合使用により、単菌使用よりも酵素活性および浄化率が向上することを見出した。さらに、通気により土壌中での分解菌の成育速度及び蔓延率が向上することを見出した。また、塩基性土壌でも酸性土壌と同様に分解菌により原油(C重油)が浄化できることも見出した。 2.栄養源等の添加が浄化に及ぼす影響解明: 高濃度汚染土壌浄化時に数種の栄養源を添加して調べた。その結果、炭素源としてグルコースを加えた場合の原油(アスファルト)汚染土壌の浄化率は殆ど増加しなかった。しかし、一種の栄養源を添加した場合には菌の成育状況も改善され、浄化率が向上した。4ヶ月培養後の浄化率は栄養源無添加に比べ、各々131,128%増加した。 3.浄化における石油成分の動態調査: 石油分解菌による原油(アスファルト)汚染土壌の浄化による石油成分の培養期間における動態及び浄化期間における菌が産出する酵素活性(ジオキシゲナーゼ、リグニナーゼ)の経時変化も調べた。その結果、酵素活性は培養期間が長くなる程低下した。それに伴って、原油(アスファルト)の各成分、脂肪族炭化水素部、芳香族炭化水素部、NSO部、アスファルテン部の分解率も低下した。各成分の中では、脂肪族炭化水素部、芳香族炭化水素部が分解されやすく、NSO部、アスファルテン部は分解され難くかった。しかし、栄養源添加により酵素活性の増加が認められ、それに伴って、原油(アスファルト)の各成分の分解率が増加することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画を実施し幾つかの新規な成果を得た。単独の菌処理でなく、複数の菌を使用することにより浄化率を高めることが出来ることも見出した。分解菌の組み合わせ処理による浄化率の向上も今後の検討課題と考えられる。また、土壌浄化処理の場合、菌を土壌のどの部位に加えた場合に浄化効率が高まるかを調べて結果をえた。しかし、その部位に菌を添加する場合には空気の導入が大切であることも見出した。 さらに、塩基性土壌でも石油汚染を浄化できることも見出したが、より多くの菌を成育させる方法の検討も必要と考えられた。高濃度汚染土壌の浄化時に栄養源を添加することにより、浄化率を高め得ることが見出されたので、更なる浄化率の向上を検討する必要があるものと考えている。なお、原油成分の中の、多環芳香族炭化水素が植物により分解できることも見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は下記のことを実施する予定である。(1)石油分解菌による汚染浄化:石油分解菌を用いて、高濃度原油(アスファルト)汚染土壌の浄化について、浄化条件を精査しながら浄化法の検討を行う予定である。(2)数種の分解菌の組み合わせによる高濃度原油(アスファルト)汚染土壌の浄化について、浄化条件を精査しながら浄化法の検討を行う。(3)また、栄養源等の添加による浄化率を高めるための方法の検討を行い、栄養源の添加が浄化におよぼす影響を明らかにする。さらに、浄化時の原油(アスファルト)の各成分の動態についても調べる。昨年度は研究計画をほぼ遂行出来たので特に取り上げて検討する事項はないが、高濃度の汚染土壌の浄化法を明らかにするための検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究計画における研究費の使用計画は下記の様に考えている。 1.石油分解菌の組み合わせによる原油汚染土壌浄化における栄養源添加の影響解明:石油分解菌を組み合わせて、高濃度原油(アスファルト)汚染土壌の浄化を行う場合に、栄養源を添加して汚染浄化を行い、浄化における栄養源添加の影響を明らかにする。分解菌による汚染土壌の浄化率を調べるためには、汚染土壌の抽出、抽出物の分離分析などの操作が必要であり、有機溶媒、分離用のカラム用シリカゲルなどでの試料の精製が必要となるため、これらを購入する予定である。また、浄化時の分解菌が産出する酵素活性を調べ、酵素活性を高める方法を見出すことも浄化率向上に必要である。そのため、酵素活性測定用試薬や基質なども購入する予定である。さらに、海岸汚染土壌を浄化するためには、海水条件で生育する分解菌による浄化法の検討が必要である。そのための浄化法の検討も行う。 2.分解菌の成育状況調査:分解菌の成育が原油汚染土壌の浄化には必須である。土壌中で垂直方向の成育速度が土壌が深くなる程遅くなるので、空気の導入等を行い、成育速度を改善することを検討する。そのため、空気導入のためのエアフィルター、チューブ等の購入を予定している。また、分解菌の担持法についてもさらに検討する予定である。 3.浄化における石油成分の経時変化:浄化時における汚染土壌中の原油成分を経時的に調べ、それらの成分の経時変化を明らかにする。そして、浄化率との関係、酵素活性の経時変化と浄化率の関係を調べる。原油成分の経時変化を調べる場合には、汚染土壌から原油成分を抽出し、抽出物をさらに分析定量するだけでなく、GLCやGC/MSでさらに調べる必要がある。そのため、抽出溶媒や分離用シリカゲル、精製用シリカゲル、誘導体か試薬等が必要である。これらを購入予定である。
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Research Products
(4 results)