2011 Fiscal Year Research-status Report
伝統的な樹木利用法の自然科学的理解に基づく民俗木材学の創出
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23580231
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内海 泰弘 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50346839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 信也 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20215213)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 植物民俗 / 木材材質 |
Research Abstract |
本研究では地域で受け継がれてきた樹木(木材)利用に関する民俗知の自然科学的評価,特に定性的な木材材質に関する伝承を材質学的手法で定量的に検討することを目的としている.そのために,地域固有の植物利用が現在でも行われ,植物民俗情報の蓄積が進んでいる宮崎県椎葉村を主な調査対象地域とし,植物民俗に精通した複数の年長者の方(インフォーマント)から約 70 種の樹木の利用法と定性的な材質に関する聞き取り調査を行った.調査時には目的とする樹木の民俗のみならず,その背景にある伝統的な生活様式についても複数回にわたり確認しながら情報を取得した.その結果,建築材や器具材してはその部材に求められる加工性,強度,耐久性を考慮して様々な樹種が選択されてきたことが明らかとなった.また,時代背景に応じて,利用する樹木の種類が変化してきたことも示唆された. 次いで,調査地域で伝統的な利用が確認された樹種を,調査地に所在する九州大学農学部附属演習林宮崎演習林の林内で伐採し,材質試験用試料を得た.調査対象には高木だけではなく,あまり大きな部材が取れない低木も含まれるため,一般的な材質試験で行われるJIS規格による大型試料での解析は困難であった.そのため,小型試料による材質の評価法を検討し,高木,低木いずれの試料も評価できる実験方法を決定した. このようにして蓄積した上記のデータと既存の知見を比較検討するため,既存の報告を照査し,比較可能な民俗および材質データ項目の洗い出しと,データベース構造の検討を行った. 以上のように,本年度の結果により,樹木民俗知を材質学的に評価する基盤が確立された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度に予定していたインフォーマントからの聞き取り調査は順調に進み,樹木の利用法を中心とした,民俗知の精度の高いデータを得ることができた. 一方,材質学的評価については,試料の採取は行われたものの,既存の規格にない低木における小型試料の試験法の検討に時間を費やしたため,解析に耐え得る程度のデータ数は得られなかった. そのため,本研究の目的である樹木の民俗知を材質学的に評価した論文の作成には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
23 年度と同様にインフォーマントへの聞き取り調査を継続し,より多数の樹種の利用法を中心とする民俗知の収集を行う.また,材質試験の解析をすすめ,形状が大きく異なる各樹種の樹幹より,比較可能な材質データを抽出し,民俗知の解析結果を照合して投稿論文を作成する.また蓄積された上記データから民俗木材データベースを構築する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
材質解析試験を行う際に必要となる機器と消耗品の費用,ならびにデータベース構築に用いるパソコン関連の消耗品の費用として物品費を使用する.また調査および学会参加のための費用として旅費を,データベース入力と聞き取り調査時の謝礼として人件費・謝金を計上する.試料の輸送費や論文投稿料をその他に含める.
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