2011 Fiscal Year Research-status Report
セルロース・ナノファイバー固体表面反応による新規交互共重合セルロース誘導体の調製
Project/Area Number |
23580233
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川田 俊成 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40214655)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 交互共重合セルロース誘導体 / セルロース誘導体 / セルロースナノファイバー / 固体表面反応 |
Research Abstract |
異なる置換様式を持つ2種類のグルコース残基が交互に配列する新しいタイプのセルロース誘導体(交互共重合セルロース誘導体)を調整し、種々の化学的、物理化学的性質を調べることを目的として、平成23年度は(1)ホヤから、交互共重合セルロース誘導体の原料となるセルロース・ナノファイバーの調製法を確立することと、(2)調整したセルロース・ナノファイバーを交互共重合セルロース誘導体に導くための反応であるカルボニル化(TEMPO酸化)とエステル化反応の条件検討を行った。 (1)と(2)のカルボニル化については、先ずマボヤ(Halocynthia roretzi)外套部から幅4~8 nmのセルロース・ナノファイバーを調製する方法を最適化した。即ち、NaOH水溶液処理,HCl液処理を前処理とし、ミキサー処理,ホモジナイズ処理を行い、繊維分をろ過後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液処理を行い調製した。これのTEMPO酸化反応(Isogaiら、Cellulose 4, 153 (1998)を参考にして条件細部を最適化)を最大ホヤセルロース1 gスケールで実施した。各処理後のセルロース試料は、各種分析を行い、IRでナトリウム塩型(-COO・Na)で与えられる吸収(1600 cm-1)は遊離型(-COO-)で1730 cm-1にシフトすることなどを明らかにした。また、凝集により40 nmを超える部分が残存していることも確認できた。(2)のエステル化について、先ずモデル化合物であるmethy β-D-glucuronic acid(1)を用いて、種々のアルコール類とのエステル化、種々のアミン類とのアミド化(研究計画提出後に追加した計画)のスクリーニング実験を行った。有望な反応が多く発見されたが、当該年度はメチルエステル化に絞って実施し、交互共重合セルロース(メチルエステル)と考えられる物質の試作に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、セルロース・ナノファイバーの表面反応を行う。この反応を評価するため、可能な限りセルロース・ナノファイバーのサイズを均一に揃えることが重要となる。平成23年度に実施した研究の結果、おおむね4 - 8 nmの幅を持つセルロース・ナノファイバーを安定的かつグラム・スケールでの調製する方法を確立できた。ただし、一部凝集(約40 nm程度)が観察されたこと、また、より均一に調製する方法のヒントも得られた。平成24年度はこれらの点について、引き続き検討を重ねて、より質の高いセルロース・ナノファイバーを得ることも課題としたい。 一方、調製したセルロース・ナノファイバーの表面反応によって、交互共重合セルロース誘導体を調製する反応のスクリーニングを行った。即ち、TEMPO酸化によって得られたカルボキシル基と種々のアルコール類および1級アミン類との反応をスクリーニングして、幾つかの有力な反応をピックアップすることができた。また、メチルエステル化反応について詳細な条件検討を行い、メチルエステル型の交互共重合セルロース誘導体を試作することに成功した。 これらの結果は当初の予定通りであり、一部当初の予定以上の進展があった(アミド型誘導体の合成など)。次年度以降も当初の計画とおり着実に研究を進捗させて行く。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度(平成24年度)は、当初の計画通り、引き続きホヤ外套部から得られるセルロース・ナノファイバーの表面反応のスクリーニング実験を行う。昨年度(平成23年度)の結果によって、昨年度用いたモデル化合物(methyl β-D-glucuronic acid:単糖型)に加えて、methyl β-D-cellobio-di-uronic acid(二糖型)を用いて、よりリアルなモデル実験を行える。これらを用いて、カルボニル基への各種アルコール類、および1級アミン類との反応(古典的エステル化反応、およびアミド化反応)に焦点を絞ってスクリーニングを行いたい。さらに、アジ基の導入とこれに対するアルキン類との反応(トリアゾール化反応)についてもスクリーニングを行う。 上記スクリーニングでピックアップされる反応をホヤ外套部から得るセルロース・ナノファイバーに適用する。昨年度(平成23年度)までの研究結果によって、分析の際の指標となる吸収やピークについては明らかにされているので、順調に進展することが予想される。また、同時により均一なセルロース・ナノファイバーの調製方法についても、引き続き検討を加えることとする。 上記の通り、予定通り複数の交互共重合セルロース誘導体を試作する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初24年度に購入予定であった「マグネティックスターラー付低温油槽(低温反応装置)」は平成23年度に購入したが、この分の予算は低温反応で実施するスクリーニング実験に必要な低温反応用ガラス器具などに充当する。 当初24年度に購入予定であった「ウルトラミクロ天秤」については、調製するセルロース・ナノファイバーの均一性によって必要な有効桁数が変化するため、セルロース・ナノファイバーの調製プロトコールが最終的に決定されるのを確認後、最適の機種を購入する予定である。
|