2011 Fiscal Year Research-status Report
外来種アメリカカンザイシロアリの繁殖様式解明と総合防除法の確立
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23580235
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
板倉 修司 近畿大学, 農学部, 教授 (60257988)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シロアリ / マイクロサテライト / コロニー解析 |
Research Abstract |
被害建築物の垂木(2000 mm)を,250 mm長の8部材へ切断した。同様に胴差し(2750 mm)を250 mm長の11部材へ切断した。24頭以上の採集が可能であった10部材から採集した擬職蟻(各24頭)の頭部を切断し,ゲノムDNAを1頭ずつ抽出した。ゲノムDNAを鋳型とし,アメリカカンザイシロアリ用マイクロサテライト遺伝子座増幅用のプライマー対4組(07S-7,28S-10,28T-12,28T18-2)を用いてPCR増幅を行った。合計960本のPCR増幅産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し,増幅されたDNAバンドの大きさを読取り,Genetic Date AnalysisならびにRelatednessソフトウェアを用いて解析した。胴差しではヘテロ接合体率の期待値と観察値がほぼ同じ値であったのに対し,垂木では観察値が低かった。この結果は,胴差しでは任意交配に近いが,垂木では近親交配が起こっていることを示唆している。有翅虫の侵入箇所となりやすい垂木では,同一コロニーから飛び立った有翅虫が垂木へ侵入し,その後に近親交配が生じたと考えられる。一方,建物内部にある胴差しでは,異なるコロニーから別々に侵入した個体が移動してきた後に交配が起こったと推定される。分集団内での近交係数が正の値であったため,1対以上の生殖虫による交配あるいは2つ以上のコロニーの融合が起きているものと推定される。一方,集団全体での近交係数は0.5以上と高い値であり,集団全体で近親交配の頻度が高いことが示唆された。血縁度は全体に高い値であったが,胴差しでは比較的低く,垂木では高い傾向が認められた。この血縁度データにより,侵入箇所となりやすい垂木では同一コロニーからの有翅虫による近親交配が,建物内部の胴差しでは異なるコロニーから来た個体による交配が起こっているとの推定が裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アメリカカンザイシロアリの被害材は個人の財産である木造建築物の一部であることが多く,また被害を防止するため薪など入手しやすい形状の被害材は撤去されており,シロアリを採集するための被害材の入手が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカカンザイシロアリを採集するための被害材の採集を継続する。また,新たなマイクロサテライトマーカーが報告されたので,これらのマーカー増幅用プライマー対を合成し,これまでに抽出したゲノムDNAの再解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ゲノムDNA抽出ならびに増幅用の試薬と器具類の購入,増幅産物の解析に用いる試薬の購入に使用する。また,アメリカカンザイシロアリ被害地域への訪問ならびにシロアリが生息する被害材の採集のための旅費に使用する。
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