2013 Fiscal Year Annual Research Report
サケ類における母川刷込関連脳領域の解明:嗅神経一次投射領域の神経解剖学的解析
Project/Area Number |
23580241
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 秀明 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (40289575)
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Keywords | サケ属魚類 / 母川回帰 / 嗅神経系 / 形態学 / 神経解剖学 / 嗅細胞 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
本研究は,研究実施計画に沿って,サケ類の母川刷込に強く関わる脳領域を明らかにするために,サケ類の降河時および母川遡上時の各嗅板からの嗅細胞軸索を可視化することにより,嗅神経一次投射領域を神経解剖学的に解析し,その詳細な脳地図の作成を目指すものである。最終年度である今年度は,シロザケ (Oncorhynchus keta) の降海前幼稚魚および外洋索餌回遊中の未成熟成魚を用いて,サケ属魚類の嗅細胞分子マーカーとして有用な嗅覚指標タンパク (olfactory marker protein: OMP)とグルタチオン S-トランスフェラーゼπ(GST) およびニオイ受容関連二次メッセンジャーカスケードに関わる嗅覚型Gタンパクαサブユニット(Gαolf) に関する嗅神経系でのタンパク発現を共焦点レーザー顕微鏡観察による免疫組織化学的解析を行った。その結果,幼稚魚においてGST,OMPが嗅上皮の嗅細胞と基底下の嗅神経束で局在が認められ,GST免疫陽性嗅細胞は核周辺部の位置が高いものと低いもの双方が確認されたが,OMP免疫陽性嗅細胞は核周辺部の位置が高いものが中心に観察された。これは嗅細胞の細胞型の違いまたは嗅細胞の成熟度の違いによるものと考えられた。嗅上皮自由表面上の線毛と樹状突起先端にGαolf免疫陽性反応が認められ,サケ科魚類では初めて確認された。未成熟成魚は幼稚魚と比べ,両嗅細胞分子マーカーの免疫陽性反応を示す嗅細胞の密度が低かった。これは嗅房の発達・大型化に伴い、嗅上皮構成細胞(含む非嗅細胞)が増加することに起因していると考えられた。本研究助成の期間は終了するが,現在,嗅球側へのこれらの分子を含有する投射軸索の可視化を行っており,サケ類の嗅神経一次投射領域の詳細をまとめる予定である。
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