2011 Fiscal Year Research-status Report
細菌感染に対するサーフェスバリアとしての二枚貝体表面粘液の機能解明
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23580245
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 計介 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80240662)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / マガキ / ホタテガイ / 生体防御 / 感染 / 体表面粘液 |
Research Abstract |
東日本大震災による津波のため、宮城県女川湾に垂下したマガキ試料が流出してしまい、研究の実質的なスタートが遅れた。しかし、2011年6月から新潟県佐渡島加茂湖産のマガキを導入して実験を行った。研究実施計画で予定した4つの項目のうち、3つについて成果を上げることができた。1.マガキ粘液細胞の組織学的観察および免疫組織化学:外套膜および鰓の組織切片を作製し、粘液細胞の同定を行うとともに分布様式について明らかにした。2.マガキ・リゾチームおよびキチナーゼに対する特異抗体の作製:免疫染色に用いる抗体を作製する。Pichia酵母を用いてリゾチームの組換えタンパクを産生させることに成功した。これを抗原として力価の高い抗体を作製することができた。キチナーゼについては、大腸菌による組換えタンパクの産生を行い、これを抗原として抗体を作製した。3.ホタテガイ・リゾチームおよびキチナーゼの分離精製と分子クローニング:ホタテガイの外套膜および体表面粘液において、高いリゾチームおよびキチナーゼの活性を確認した。リゾチームについては外套膜の磨砕ろ液を材料に部分精製はできたが、完全精製はできなかった。そこで、リゾチームの遺伝子をクローニングし、アミノ酸の部分配列を明らかにすることを実施中である。キチナーゼについては、活性は高いがタンパク含量が少ないため、最初から分子クローニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災による津波のため、宮城県女川湾に垂下したマガキ試料が流出してしまい、研究の実質的なスタートが遅れた。しかし、2011年6月から新潟県佐渡島加茂湖産のマガキを導入して実験を行った。研究実施計画で予定した4つの項目のうち、3つについて成果を上げることができた。2012年になって、希望する宮城県産マガキの試料が少しずつ集められるようになり、研究実施計画の通りになってきている。ホタテガイも同様に、青森県産の良い試料が得られてきていることから、研究は順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、以下の項目を行う。1.マガキにおける体表面粘液および生体防御因子分泌様式の決定:マガキにおいて組織学的観察とともに、細菌曝露刺激による粘液分泌の有無、分泌量の変動、粘液タンパクの量および質の変化、リゾチームの量および比活性の変化を明らかにして分泌様式を知る。2.マガキのサーフェスバリアおよび体内の生体防御機構による細菌防除機序の検討:二枚貝に対して非感染性である海洋性グラム陽性および陰性細菌を数種類選定し、これらをブロモデオキシウリジン (BrdU) が含有される培地で培養する。これにより、これらの細菌は抗BrdU抗体で容易に検出・識別可能となる。これらの細菌をマガキに浸漬法および注射法で曝露し、外套膜、鰓、消化管、血球など各組織中のBrdU量をELISA法で定量的に測定する。3.細菌曝露によるマガキ体表面粘液および組織中の生体防御因子の活性変化の評価:先の実験と同様に細菌(ただしBrdU標識はしない)をマガキに曝露する。体表面粘液および先の実験で細菌の取り込みが見られた組織のリゾチーム・キチナーゼ・レクチンといった生体防御因子の活性および酵素活性測定キットのAPIZYMで測定可能な19種類の酵素の活性を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画について、当初計画との大きな違いはない。平成23年度に達成できなかった部分を実施するために、消耗品費などの物品費が当初の考えよりも少し多くなると考えられる。また、当方では行うことのできない網羅的遺伝子解析について専門機関に委託するための費用が必要となる。旅費や謝金等については大きな変更はない。
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Research Products
(2 results)