2012 Fiscal Year Research-status Report
細菌感染に対するサーフェスバリアとしての二枚貝体表面粘液の機能解明
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23580245
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 計介 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80240662)
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成24年度の当初に計画した3つの大項目について、以下の結果を得た。 1.マガキにおける体表面粘液および生体防御因子分泌様式の決定:マガキにおいて組織学的観察を実施し、リゾチームの産生部位を特定した。その後、細菌曝露刺激を行って粘液分泌の有無、分泌量の変動を調べた結果、すべてのケースではなかったが粘液分泌量の増加が認められた。また粘液タンパクの量および質、リゾチームの量および比活性も粘液量の変化に連動して変化することが明らかとなった。 2.マガキのサーフェスバリアおよび体内の生体防御機構による細菌防除機序の検討:二枚貝に対して非感染性である海洋性グラム陽性および陰性細菌を数種類選定し、これらをブロモデオキシウリジン (BrdU) が含有される培地での培養を試みた。適切な添加量や培養時間が細菌種によって異なり難しい点があったが、3種類の菌が培養できるようになった。これらの細菌は抗BrdU抗体で検出・識別可能であった。これらの細菌をマガキに浸漬法および注射法で曝露してマガキ外套腔内、体内での検出を試みた結果、外套腔内の細菌はよく観察できた。体内(組織内)での観察は難しく今後の検討課題となった。 3.細菌曝露によるマガキ体表面粘液および組織中の生体防御因子の活性変化の評価:先の実験と同様に細菌をマガキに曝露し、その時の体表面粘液および組織のリゾチーム・キチナーゼの活性を調べた。その結果、体表面粘液のリゾチーム活性が有意に上昇した。また酵素活性測定キットのAPIZYMを用いて測定可能な19種類の酵素活性を測定した結果、4種類の酵素で明確な活性上昇が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は23年度の遅れを取り戻し、おおむね順調に研究が進んだと評価している。理由としては東日本大震災に伴う津波で流失したマガキ試料に代わる新しい産地のマガキ試料や24年度から検討をはじめたアカガイ試料の入手が順調に行われ、実験・解析ができたこと、また共同研究等により新しい機器の利用ができてデータ処理量の増加,解析レベルの向上が見られたことが挙げられる。その結果、マガキ外套膜粘液からリゾチームとは異なる新しい抗菌成分を見いだしたり、アカガイ血リンパタンパクの解析が進んだりした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで結果を得たマガキに加えてアカガイおよびヒオウギの外套膜粘液について、その生体防御因子の活性を明らかにする。アカガイは粘液は少量しかないが、タンパク濃度が非常に高く様々な防御因子を持つことが予備実験から明らかである。ヒオウギは他のイタヤガイ科の貝と同様、粘液量がマガキの数倍も多く例えばリゾチームの活性が非常に高い。これらの貝を用いて得た結果とマガキの結果を考え合わせることによって、二枚貝類における外套膜粘液、ひいてはサーフェスバリアの全貌が明らかになると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画について、当初計画との大きな違いはない。平成24年度に達成できなかった部分がいくつかあるので、これを実施するために、消耗品費などの物品費が必要であるが、大きな変更ではない。旅費や謝金等についても大きな変更はない。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Molecular characterization and expression analysis of chitinase from the Pacific oyster Crassostrea gigas.2013
Author(s)
Okada, Y., Yamaura, K., Suzuki, T., Itoh, N., Osada, M.and Takahashi, KG.
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Journal Title
Comp. Biochem. Physiol.
Volume: 165B
Pages: 83-89
DOI
Peer Reviewed
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