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2012 Fiscal Year Research-status Report

水産重要種カワヤツメの性成熟制御機構解明のための分子生態学的アプローチ

Research Project

Project/Area Number 23580250
Research InstitutionUniversity of Toyama

Principal Investigator

山崎 裕治  富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (30332654)

Keywordsヤツメウナギ / 性成熟 / 正の淘汰 / マイクロサテライトDNA / バソトシン / 集団構造 / 資源管理 / 成長
Research Abstract

ヤツメウナギ類における性成熟機構解明のために,淘汰を受けている遺伝子座の探索を実施した.昨年度において,遺伝子座Lc-locus1が淘汰を受けており,この遺伝子座が浸透圧調節に関与することが報告されているバソトシン前駆体の約6000bp上流に座位することが推定された.そこで本年度は,バソトシン前駆体の転写調節機構を解明するために,当該遺伝子座の上流領域の塩基配列分析を行った.その結果,上流約100bpに存在し,プロモーターの一領域として重要な役割を担うことが知られているグアニン四重鎖において,2塩基が関与する変異が存在することが明らかになった.この変異パタンを異なる生活史集団間において比較し,アウトライアー解析を行った結果,正の淘汰を受けている可能性が示唆された.これらのことから,浸透圧調節に関わる遺伝子座そのものが淘汰を受けていることが推定され,この遺伝子が生活史の決定の一端を担っている可能性が明らかになった.
また,カワヤツメについて,生活史変異と集団構造との関連を明らかにするために,マイクロサテライト分析による集団遺伝学的解析を行った.その結果,回遊型集団間においては,頻度の高い遺伝子流動が継続的に生じており,これにより集団サイズが維持されていることが示唆された.
さらに,実験条件下における個体の成長パタンを検討した.その結果,天然餌料と人工餌料との混合餌を与えることにより,高い成長が示された.ただし,夏期における成長の停滞が確認され,餌条件に加えて,水温条件も個体の成長に対して重要な要因となっていることが示唆された.また,性成熟の引き金となる変態の開始が,一部の個体で確認され,いずれの個体においても,変態直前には高い肥満度を保持していた.これらのことから,十分な成長と栄養蓄積が性成熟の開始に関与している可能性が明らかにされた.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実施計画において掲げた淘汰を受けている遺伝子の探索において,前年度と比べて,格段に精度の高い解析を行うことができた.そしてその結果として,性成熟に関与する候補遺伝子を明らかにした.さらにこの候補遺伝子について,上流領域の解析を進め,この遺伝子の転写に関わる領域そのものが正の淘汰を受けていることを明らかにすることができた.
また,集団構造解析について,生息地のほぼ全域に渡る集団間の遺伝子流動パタンが推定された.この結果は,重要な水産資源であるカワヤツメの資源管理において,主要生息地域において資源を維持することは,生息地全体に渡る資源の維持・回復に寄与することを示唆する重要な知見であると判断される.
さらに,飼育繁殖に関わる基礎情報の蓄積に成功したことは,将来の人為環境下における種苗生産や個体管理の上でも重要な意義を持つ.
以上の成果について,学会発表を行うに止まらず,2報の論文(英語・審査有り)として発表することができた.これらのことから,本研究は順調に進展していると判断される.

Strategy for Future Research Activity

当初の計画通り,ヤツメウナギ類の性成熟に関与する遺伝子の探索と候補遺伝子の機能解析および転写調節解析を行う.具体的には,これまでに明らかにされた候補遺伝子周辺の解読を進め,多型の検出や,それに注目した淘汰パタンの推定を行う.そしてこれらを通して,当該遺伝子の転写調節機構の解明を目指す.また,性成熟に関与する遺伝子は複数存在すると考えられるため,さらなる網羅的な探索を行い,候補遺伝子について,転写調節機構の解明を目指す.この際,従来のヒッチハイク効果を指標とするだけではなく,既知の機能遺伝子と周辺領域に関するアウトライアー解析を行う.
また,性成熟に関する生態的要因を把握するために,これまでの飼育実験における成長パタン解析を継続すると共に,野外における成長追跡や,近赤外分光分析法による非侵襲的な脂肪蓄積量の計測を行い,成長や変態に対する脂肪蓄積量の影響について理解を深める.

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

当初の計画通り,大型機器等の購入予定はなく,これまでに開発した研究方法(ヒッチハイク効果を指標とした淘汰遺伝子の探索など)を継続実施および発展させていくために必要な試薬類および器具類を購入する.また,飼育実験および野外調査に関わる器具類を購入する.さらに,上記実験の補助,研究成果報告会への参加旅費,そして論文発表に要する費用として使用する.

  • Research Products

    (3 results)

All 2013 2012

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Directional selection against different life histories in the Arctic lamprey (Lethenteron camtschaticum): identification by microsatellite analysis.2013

    • Author(s)
      Yuji Yamazaki and Terumi Nagai
    • Journal Title

      Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences

      Volume: 70 Pages: 1-5

    • DOI

      org/10.1139/cjfas-2013-0090

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Population structure and gene flow among anadromous arctic lamprey (Lethenteron camtschaticum) populations deduced from polymorphic microsatellite loci.2013

    • Author(s)
      Yuji Yamazaki, Ryota Yokoyama, Terumi Nagai, and Akira Goto
    • Journal Title

      Environmental Biology of Fishes.

      Volume: 未定 Pages: 未定

    • DOI

      10.1007/s10641-013-0121-y

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] カワヤツメ浸透圧調節関連遺伝子の転写調節が生活史決定に与える影響の検討.2012

    • Author(s)
      山崎裕治・長井輝美
    • Organizer
      2012年度日本魚類学会
    • Place of Presentation
      水産大学校(山口県)
    • Year and Date
      20120922-20120923

URL: 

Published: 2014-07-24  

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