2013 Fiscal Year Annual Research Report
有用微生物の扶育場としてのアマモ葉体表面のバイオフィルム
Project/Area Number |
23580252
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
吉永 郁生 鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (40230776)
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Keywords | バイオフィルム / 殺藻細菌 / 脱窒細菌 / 従属栄養細菌 / ヨシ帯 / アマモ場 |
Research Abstract |
平成25年度は,岡山県日生沖において,アマモ場周辺の細菌相を調査した。また,福岡県筑後川河口域のヨシ帯周辺の水域,特に筑後大堰から新田大橋にいたる河川干潮域において,ヨシ由来の有機物粒子とそこに付着している細菌に関しても調査した。日生沖のアマモ場では,アマモを採取し,そこに付随している細菌のうちで赤潮原因微細藻を殺滅する細菌(殺藻細菌)をMPN法で計数したところ,全細菌数の1%程度を占めることが明らかになった。さらにアマモ場(湾奥)の海水中にも同様の殺藻細菌がそれ以外の海域と比べて多く存在することが明らかになった。このことは,岡山県のアマモ場においてもアマモ葉が殺藻細菌の扶育場として機能し,周辺の水柱に殺藻細菌を拡散することで,潜在的に赤潮の発生を予防している可能性を示唆するものである。また筑後川の河川干潮域では,ヨシ残渣も成分として含む粒子に付着している細菌群集の従属栄養活性と呼吸活性が浮遊細菌群集のそれよりも卓越していることが明らかになった。このことは,河川干潮域の粒子が海域の一次生産者への栄養塩の供給者として,またエツやスズキ稚魚などの餌資源として重要であることをしさするものである。 本研究課題を通じて,琵琶湖のヨシ帯,大阪湾および岡山県日生沖のアマモ場,さらに筑後川河口干潮域のヨシ帯等で,殺藻細菌や従属栄養細菌,さらに脱窒細菌などを調査した結果,これらの沈水植物や抽水植物の水中茎および水中葉表面に発生する微生物被膜(バイオフィルム)には,赤潮原因藻を殺滅する細菌(殺藻細菌)や余剰窒素を除去する細菌(脱窒細菌),さらには一次生産者への栄養塩供給者として重要な働きをする従属栄養細菌などの有用細菌が多数存在しており,その影響を周辺水域に及ぼしていることを明らかにした。この成果は,今後の沿岸域管理において,ヨシ帯やアマモ場などの維持・管理・再生が重要であることを示唆する。
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Research Products
(7 results)