2011 Fiscal Year Research-status Report
養殖用として移入された外来海産魚による日本在来魚への遺伝的撹乱の解明
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23580253
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 耕至 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (50324661)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 外来種 / 遺伝的撹乱 / 多様性 |
Research Abstract |
近年,養殖や放流目的で,多種の海産魚が韓国・中国等から輸入されてきている.これらは日本沿岸の在来魚に対し,捕食・競合などの他,交雑を通した遺伝的撹乱による悪影響を及ぼす可能性があるが,淡水魚類とは異なり実例の調査確認はあまり進められていない.本研究では外来海産魚による在来魚への遺伝的撹乱が実際に生じているのかどうか,生じているならどれくらいの規模であるのかを,特に懸念される数種を対象として調査を行っている. 本年度は,まず外来海産魚であるタイリクスズキから在来のスズキへの遺伝的影響について調査を行った.輸入されたタイリクスズキの散逸個体が多く確認されている山口県瀬戸内海側の数地点の他,愛媛県,兵庫県などから,スズキの稚魚ないし未成魚を約150個体分析に用いた.同時に,両種が単独で分布し交雑の可能性がないと考えられる地域から採集されたタイリクスズキおよびスズキも分析し,比較対象とした.遺伝的分析手法としてはミトコンドリアDNAの調節領域塩基配列分析およびマイクロサテライト分析を用いた.結果として,山口県の1個体および兵庫県の数個体のスズキで,タイリクスズキからの遺伝子浸透が強く示唆される例が見いだされた. また,次年度以降のための予備調査として,輸入実績があるか,今後の可能性があるいくつかの魚種について,韓国産と日本産との間の遺伝的差異について分析を行うか,または分析用試料の収集を行った.そのうち,特にマコガレイやアカシタビラメについては韓国産と日本産との間で大きな分化が示された.また,マダラについては韓国産個体群の詳細な遺伝的分析を行い,日本産との比較データを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では,平成23年度は,タイリクスズキからスズキへの遺伝的撹乱の可能性をミトコンドリアDNAを用いて調べることと,他のいくつかの魚種について海外個体群と国内個体群との間の遺伝的差異を調べることの2つを目的としていた.このうち,前者についてはミトコンドリアDNAだけでなく,平成24年度の計画としていた核DNAの分析も一部実施することができ,順調に進んでいる.後者については,分析対象とできた魚種数は少ないが,遺伝的差異を明らかにできたものがあり,次年度に向けての準備を進めることができたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究において,輸入されたタイリクスズキが在来のスズキに遺伝的撹乱を起こしている可能性が実際に示されたため,分析するマイクロサテライト座数を増やすなどにより,その現象の確証を行う.さらに,どれくらいの規模で同様の現象があるのかを調べるため,対象水域を広げるとともに,より多くの個体を採集して分析を行う.また,国外個体群と国内個体群との間の遺伝的分化を確認する魚種を増やし,大きな分化が確認された種があれば,移入による遺伝的撹乱の検出を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,研究費減額の可能性が示されていたため,年度前半での魚類採集調査をやや控え,現有の標本を補助的に使用するなどにより研究を進めた.稚魚の採集時期は主に春―夏であるため,年度後半にその分を増やすことはできず,旅費・分析試薬費などに繰越が生じた.平成24年度および平成25年度に採集調査を増やし,また研究協力者への標本提供依頼も行い,平成24年度および25年度の研究費とあわせ,当初の全体予定に沿う内容の調査・分析を行う予定である.
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Research Products
(1 results)