2011 Fiscal Year Research-status Report
アユ抗菌ペプチドの網羅的解析による冷水病耐性獲得の機構解明への取り組み
Project/Area Number |
23580254
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯島 憲章 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (90136143)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古澤 修一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (80130037)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 抗菌ペプチド |
Research Abstract |
本研究の目的は、冷水病菌の侵入経路にあたる体表粘液や鰓、さらには冷水病菌の主な感染部位である脾臓や肝臓で産生される構成分泌型及び誘導分泌型の抗菌ペプチドを、その電荷・疎水性・分子量に基づく多次元クロマトとLC-MSを併用して網羅的に解析し、その全体像を把握すると共に、湖産系及び海産系アユの冷水病菌に対する感受性の違いが "抗菌ペプチドの種類と産生量の違いによる"ことを証明することにある。本研究を実施することにより、湖産系及び海産系アユの組織で"構成的あるいは、冷水病菌感染により誘導的に合成・分泌される抗菌ペプチドの種類と構造に関する全体像"を把握することができるので、アユの自然免疫機構を解明する上で重要な情報を提供できる。さらに、アユの冷水病菌に対する感受性の差が抗菌ペプチドの種類や産生量、冷水病菌に対する抗菌活性の違いによることを証明できれば、冷水病菌に対する耐病性獲得の機構を明らかにすることが可能となる。1)平成23年度では、海産系アユ200尾より、抗菌ペプチド精製用の試料として、体表粘液、鰓、脾臓、肝臓を採取し、冷凍保存した。2)脾臓の凍結組織より酸抽出液を調製し、Sep-Pak C18カートリッジによる脱塩後、SP-sephadex C-25により酸性, 中性及び塩基性の3画分を得た。なお、各精製段階の試料については凍結乾燥し、0.1%酢酸に再溶解してタンパク質濃度を測定すると共に、供試菌体としてB. subtilisを用い、37℃で1時間反応させた後、培地に接種して一夜培養後のコロニー数を求め、各段階希釈液のコロニー数を対照のそれと比較することで抗菌活性を求めた結果、中性及び塩基性画分に高い抗菌活性が存在することが明らかになった。3)脾臓の塩基性画分からゲル濾過カラムクロマト、2段階の逆相HPLCにより、分子量1000前後の抗菌ペプチドを単離した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アユ脾臓より新規抗菌ペプチドの単離に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)海産系アユの脾臓からの抗菌ペプチドの網羅的解析昨年度に調製した海産系アユ脾臓の中性画分にも高い抗菌活性が認められたので、両画分から分子量8000以下の粗ペプチド画分を得る。次いで、粗ペプチド画分を逆相HPLCにより溶出画分を得る。得られた各画分の抗菌活性を測定し、抗菌活性を示したすべての画分については、LC-MSによる分子量測定により純度を推定する。単一成分及び混合成分と推定されたピークについては、抗菌ペプチドを精製すると共に、一次構造を決定する。これらの結果に基づいて、海産系アユの鰓、脾臓、肝臓に存在する構成分泌型の抗菌ペプチドの種類と構造、さらにはF. psychrophilumに対する抗菌活性に関するリストを作成する。2)湖産系及び海産系アユの冷水病菌感染試験 湖産系及び海産系アユを40尾ずつ用い、冷水病死亡魚を垂下した水槽内で飼育することにより冷水病菌に感染させた後、0, 3, 6, 9, 12日目に両系の個体を5尾ずつ取り上げ、5尾ずつから冷水病菌数測定用に脾臓を摘出し、別の3尾ずつからは抗菌ペプチド定量用試料として鰓、腸管、脾臓、頭腎、腎臓及び肝臓を摘出し、直ちに液体窒素中で凍結し、使用するまで-80℃で保存する。なお、冷水病菌数測定用の脾臓から、Proteinase-K-SDS法によりDNAを抽出し、これまでに確立したリアルタイムPCR法により脾臓組織中の冷水病菌数を求める。また、抗菌ペプチド定量用の試料は広島大学に送付し、次年度の実験に使用する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、分取クロマトグラフィーシステム1850千円を購入するよう予定していたが、研究費に占める消耗品費の割合が極めて低いことから、分取クロマトグラフィーシステムの購入を取りやめ、組織保存用のフリーザーを購入したため、未使用見込額853千円が見込まれた。未使用見込額は平成24年度の研究における消耗品費として使用する予定である。抗菌ペプチド精製用の分離用カラム、試薬類ガラス器具類及びプラスチック器具類の購入に1,103千円を計上する。なお、精製した抗菌ペプチドについては、質量分析計による分子量及びMS/MSによるアミノ酸配列分析の依頼測定、プロテインシークエンサーによるアミノ酸配列分析の支払いに200千円を計上する。旅費と謝金にそれぞれ50千円を計上しており、アユの飼育と冷水病菌数の測定に250千円を計上している。
|