2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロバイオアッセイによる赤潮生物の毒性因子解析
Project/Area Number |
23580255
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小田 達也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (60145307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (90363473)
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Keywords | 赤潮 / プランクトン / 培養細胞 / バイオアッセイ |
Research Abstract |
赤潮の原因生物である海洋性プランクトンが魚介類を斃死させる事は古くから知られているが、その毒性機構の詳細は未だ不明である。赤潮プランクトンの毒性機構解明には、これまで、魚や貝類など海洋生物を用いた方法が主流であった。しかしながら、これら海洋生物の飼育には特別な施設が必要であることや操作の煩雑さ、さらに再現性に乏しい等の問題が指摘されている。従って、赤潮原因生物の毒性を調べるより簡便な方法の開発が求められている。本研究では、赤潮生物の毒性を解析するための、通常の実験室でも対応できる高感度でしかも簡便なマイクロバイオアッセイ法の確立とその有効性の検証を目的として、多面的取り組みを実施している。昨年度からの継続で本年度においても、特に毒性が強い赤潮原因種であるシャットネラ、カレニア・ミキモトイ、ヘテロカプサ・サーキュラリスクアーマを対象としたマイクロバイオアッセイ法開発に取り組んだ。これまでに実施した種々の動物種の赤血球に対する溶血活性、ワムシやアルテミアなどの動物プランクトンに対する毒性、海洋細菌(ビブリオ属)に対する毒性試験に加え、本年度は特に動物培養細胞をターゲットとして赤潮プランクトンの直接暴露での毒性検定法開発に取り組んだ。ブリ鰓由来上皮細胞やVero細胞に加え、ニジマス鰓由来細胞も導入し、検討した。その結果、調べた赤潮プランクトンの内、カレニア・ミキモトイが特に強い細胞毒性を発現する事がわかった。カレニア・ミキモトイについては、これまでの研究で強毒株と弱毒株が得られており、今回用いた培養細胞に対する毒性も、株の相違を反映する結果が得られた。さらに、カレニア・ミキモトイの強毒株と弱毒株のアワビやクマエビに対する毒性と培養細胞を用いた毒性試験の結果は良く相関していた。以上の結果は、現在開発中のマイクロバイオアッセイ法の有効性を示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤潮プランクトンの毒性機構に関しては、これまでの多くの研究にも関わらず、多くの点が不明である。その理由の1つとして、有効な毒性検定法が無かった事が上げられる。この様な状況において、本研究で取り組んでいる、高感度でより簡便なマイクロバイオアッセイ法は赤潮研究の突破口となると考えられる。これまでに開発した種々の動物種の赤血球に対する溶血活性、ワムシやアルテミアなどの動物プランクトンに対する毒性、及び海洋細菌(ビブリオ属)に対する毒性に加え、魚類を含む動物細胞に対する赤潮プランクトンの直接暴露においても、毒性を把握できることを実証した点は高く評価できると考えられる。すなわち、培養細胞を用いた赤潮プランクトン暴露実験の有効性が見出された点は今後の研究に極めて有益な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロバイオアッセイ法としてこれまでに開発した、種々の動物種の赤血球に対する溶血活性、ワムシやアルテミアなどの動物プランクトンに対する毒性、及び海洋細菌(ビブリオ属)に対する毒性、さらに培養動物細胞に対する赤潮プランクトンの直接暴露による方法により得られた結果から、毒性機構の詳細や背景にある毒性因子は赤潮種により極めて異なることがわかってきた。これまでに調べたシャットネラ、コクロディニウム・ポリクリコイデス、カレニア・ミキモトイ、ヘテロカプサ・サーキュラリスクアーマの内、カレニア・ミキモトイはいずれのマイクロバイオアッセイにおいても最も強い毒性を示したことから、非常に強力な生物毒素の存在が推定される。そこで、その毒素本体の生化学的側面についてさらに詳細に検討して行く予定である。シャットネラについては活性酸素が毒性因子として関与する可能性についてさらに研究して行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な分析機器等の設備は現有のものでほぼ対応可能である。24年度の研究実施に必要な試薬及び培養器具は前年度購入分で対応出来たため、約38万円を25年度に繰り越した。一方、25年度は新たに試薬及び培養器具等の消耗品費が必要になる他、本研究の最終年度であり、研究成果の論文投稿や学会発表の予算が必要となることから、前年度の繰り越し分を組み込んだ以下の予算配分とした。赤潮プランクトン毒性解析の手段としてのマイクロバイオアッセイ法確立とその有用性検証に関連して必要な、細胞培養用の培地及びプラスティックウェア、アッセイに必要な試薬等消耗品費約60万円、研究成果の学会発表に必要な旅費等として50万円、論文投稿掲載に必要な20万円、その他として18万円とする。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Quercitrin protects against ultraviolet B-1 induced cell death in vitro and in an in vivo zebrafish model2012
Author(s)
Hye-Mi Yang, Young-Min Ham, Weon-Jong Yoon, Seong Woon Roh, You-Jin Jeon, Tatsuya Oda,Sung-Myung Kang, Min-Cheol Kang, Eun-A Kim, Daekyung Kim, Kil-Nam Kim
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Journal Title
Journal of Photochemistry and Photobiology B
Volume: 114
Pages: 126-131
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Neuroprotective Effects of Nannochloropsis oculata Against AAPH-induced Oxidative DNA Damage in HT22 Cells2012
Author(s)
Kil-Nam Kim, Seon-Heui Cha, Eun-A Kim, Min-Cheol Kang, Hye-Mi Yang, Min-Joo Kim, Hye-Young Yang, Seong Woon Roh, Won-Kyo Jung, Soo-Jin Heo, Daekyung Kim, You-Jin Jeon, and Tatsuya Oda
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Journal Title
International Journal of Pharmacology
Volume: 8
Pages: 527-534
DOI
Peer Reviewed
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