2011 Fiscal Year Research-status Report
薬剤による赤潮生物の栄養細胞の殺滅機構とシストの発芽抑制機構の解明
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23580258
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
前田 広人 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (80238873)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 赤潮 / シスト / 有害藻類 / 殺滅機構 / 発芽抑制 |
Research Abstract |
本研究では、様々な細胞生理学の手法を取り入れて、水酸化マグネシウムや酸化チタンなどの赤潮駆除剤としての殺滅機構とシストの発芽抑制機構の解明に取り組み、効果の向上を目指している。今年度は赤潮の現状把握と赤潮生物の分離ならびにシストの検出のための現場調査と室内実験による栄養細胞の赤潮駆除剤による殺滅効果の検証を行った。現場調査は東町と山川湾で実施した。今年度は東町ではChattonella marinaの検出はみられたものの、赤潮を形成するまでには至らなかった。その原因については現在解析中である。一方、山川湾では2012年2月にPsudo-chattonellaの赤潮が発生し、約6000万円の被害をみた。赤潮前後の水質の変化など現在解析中である。また、東町と山川湾の底泥からシストを検出することができた、今後はこれらの底泥を用いたシストの発芽抑制実験を行う予定である。室内実験においては、水酸化マグネシウム、MEK(酸化チタン、過炭酸の混合物)のほかに過酸化カルシウム、過炭酸ソーダを用いて赤潮の主要生物であるHeterosigma akashiwo, Chattonella marinaに対する運動阻害効果とその添加量の検討を行った。その結果H. akashiwoに対しては、0.1 g/lの低い濃度で、かつ5分後に90%以上の運動阻害率を示した過酸化カルシウムにおいて、またC. marinaの場合は、0.1 g/lの低い濃度でかつ、5分後に90%以上の運動阻害率がある水酸化マグネシウムにおいて、それぞれ運動阻害効果が最も高いことがわかった。本研究の以前の成果も含めて、赤潮生物の生理環境を制御する遺伝子解析や駆除剤に関連する研究成果については、論文投稿と学会発表の継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤潮駆除剤の効果については、今後詳細なデータがとれる見通しが立った。今後はより詳細なデータ取得めざす。活性酸素の検出については、現在進行中である。とりわけ、細胞内の濃度を測定する方法を試行錯誤中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は具体的には、これまで赤潮駆除剤として開発してきた水酸化マグネシウム単独、ならびに酸化チタンなどその他の薬剤との組み合わせによる殺滅機構の解明をおこなう。赤潮生物(カレニア、シャトネラ、ヘテロシグマ)を実際に内湾環境に則した条件で室内培養し、水酸化マグネシウムや酸化チタンなどの添加量を変えて、殺滅効果を定量する。定量には、総細胞数と運動性細胞数の変化をもちいる。同時に活性酸素を、発色試薬とマイクロプレートリーダーを使用して測定する。さらに、他の薬剤との組み合わせによる影響も調査する。これらの結果の相関関係を明らかにして、関係式を導く。同様に、効果が現れない赤潮生物(ヘテロカプサ等)の培養株を用いて対照実験とする。また、水酸化マグネシウムとの組み合わせ薬剤としては、酸化チタンの他にやすでに使用されている入来モンモリロナイトやバイオサーファクタントなどとの組み合わせによる赤潮駆除剤の検討も行う。さらに、室内において底泥を含むコアチューブを設置し、そこにシストを投入した後、上記の薬剤を散布し、シストの経時的な変化を確認する。発芽能力の判定は、光合成活性を蛍光分光光度計によって測定することによって求め、それらのデータから薬剤の組み合わせなどによるシスト抑制効果の関係式を導く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
赤潮の現状把握とシストの検出のための現場調査を数回実施する。このための旅費を要求する。また、本研究に資する情報収集と分析のために出張する旅費を請求する。室内実験における、アッセイキットや遺伝子解析のための実験器具および試薬を請求する。また、現場データ解析のためのパソコン関連消耗品を請求する。
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Research Products
(9 results)