2012 Fiscal Year Research-status Report
薬剤による赤潮生物の栄養細胞の殺滅機構とシストの発芽抑制機構の解明
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23580258
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
前田 広人 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (80238873)
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Keywords | 赤潮 / シスト / 有害藻類 / 殺滅機構 / 発芽制御 |
Research Abstract |
本研究では、様々な細胞生理学の手法を取り入れて、水酸化マグネシウムや酸化チタンなどの赤潮駆除剤としての殺滅機構とシストの発芽抑制機構の解明に取り組み、効果の向上を目指している。今年度は昨年度に引き続き、赤潮の現状把握と赤潮生物の分離ならびにシストの検出のための現場調査と室内実験による栄養細胞の赤潮駆除剤による殺滅効果の検証を行った。現場調査は東町と山川湾で実施した。今年度も東町ではChattonella marinaの検出はみられたものの、赤潮を形成するまでには至らなかった。その原因については、珪藻類が優占したために、栄養塩の取り込みに競合が起こり、赤潮生物が優占できなかったものと推定した。一方、山川湾でも昨年とは異なり赤潮の発生はみられなかった。底泥中のシストも昨年に比較して減少していることから、シードポピュレーションが小さかったことにより赤潮が発生しなかったものと推定している。また、東町と山川湾の底泥からシストを分離し、その発芽抑制実験を行っている。室内実験においては、過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウムを用いて赤潮の主要生物であHetero-sigma akashiwoに対する運動阻害効果とその添加量の検討を行った。その結果、いずれの薬剤においても0.1 g/lの低い濃度で、約10分程度から殺藻効果が現れることがわかった。とりわけ、過炭酸ナトリウムに高い効果が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場観測では、東町と山川湾の2年間の赤潮に関する水質および底質のデータが取れている。室内実験における、栄養細胞の殺滅については、薬剤の種類の選定が順調に進んでいる。具体的な殺滅の機構については、細胞内部の状態の把握についていまだ模索中である。シストについては、室内実験において、人為的にシストを形成させることに成功している。また、それらの検出技術の高度化のために遺伝子検出と画像処理による両方の方法を確立中である。今後は人為的に形成させたシストを用いたシストの殺滅効果についても検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
現場観測では、今年度も東町と山川湾の赤潮に関する水質および底質のデータを取得する。室内実験における、栄養細胞の殺滅については、薬剤の種類の選定とともに有効濃度の測定を行う。具体的な殺滅の機構については、細胞内部の状態の把握について更なる検討を行う。シストについては、室内実験において、人為的にシストを形成させることに成功しているので、これらを用いたシストの殺滅効果についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
赤潮の現状把握とシスト検出のための現場観測を数回行う。このための旅費を請求する。また本研究に資する資料収集と各種分析のための出張旅費を請求する。室内実験における、アッセイキットや遺伝子解析のための試薬ならびに現場観測用消耗品費、データ解析のためのパソコン関連消耗品費を請求する。
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