2011 Fiscal Year Research-status Report
CD34を用いたイルカ造血幹細胞の単離同定および造血器官の特定
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23580267
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 琢也 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20307820)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イルカ / 造血 / CD34 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者がこれまでに分子性状を明らかにしたイルカCD34を用いて、骨髄からの造血幹細胞の高純度単離法を確立し、それによって現在明らかでないイルカにおける造血器官を特定することを目的としている。 初年度の平成23年度は、イルカにおける造血幹細胞の単離に先立ち、造血幹細胞の同定および機能評価を行った。研究代表者らが以前に確立した採取方法を用いてイルカの上腕骨から得た骨髄単核細胞(BMMC)を用いて軟寒天培養法を行い、BMMCに含まれることが予想される造血幹細胞の分化能および増殖能について検討した。造血幹細胞を特徴付ける遺伝子の発現を解析したところ、有力な候補としてCD34遺伝子が同定され、CD34 mRNAがバリアントを有して存在していて、さらに骨髄で活発に発現していることが明らかとなった。イルカBMMCは、同様の方法で末梢血から分離した単核細胞(PBMC)と比較して、特にCD34遺伝子が高発現しているなど、造血幹細胞に特有な遺伝子発現像を示した。コロニー形成アッセイによって、イルカBMMCは活発な増殖能力を有すると共に、好中球、単球/マクロファージ、好酸球、および巨核球などの血液前駆細胞や血球などへ分化する能力を有することが明らかとなった。一方、BMMCより数は少ないがPBMCにもCD34陽性の造血幹細胞が含まれることが示唆された。以上のことからイルカの骨髄または末梢血からCD34陽性細胞を濃縮することによって、イルカの造血幹細胞を効率的に単離できることが確認できた。現在、イルカ造血幹細胞マーカーの候補であるCD34分子に対する特異抗体を作製できたので、それを利用してBMMCおよびPBMCからのCD34陽性細胞の濃縮法を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるイルカCD34陽性細胞の単離に不可欠なイルカCD34分子に対する特異抗体を作製できたため。すなわち、これまでに明らかにしたイルカCD34の遺伝子配列およびその推定アミノ酸配列を基に細胞表面抗原となり得る領域を予測し、その領域のペプチドを合成し、免疫した動物からイルカのCD34に対する特異抗体を得ることができた。イルカのBMMCだけでなく、血液の単核球分画にもCD34陽性細胞が僅かに存在することを確認しているので、現在、この抗イルカCD34抗体を用いた免疫磁気細胞分離法(MACS法)を改善することによって、より採材が容易な末梢血液からの造血幹細胞の単離ができる可能性が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに作出した抗体およびそれを用いて確立したMACS法を駆使して、イルカの造血幹細胞候補であるCD34陽性細胞が、造血幹細胞の機能を有するか、すなわち活発な増殖能と多分化能を確認する。イルカのCD34陽性細胞を軟寒天培地で培養し、増殖細胞のコロニーを形態学的に観察するCFUアッセイによって、自己増殖能と各種血液細胞への多分化能を評価する。また、CD34陽性細胞およびCFUアッセイでのコロニー形成細胞群における転写因子の遺伝子発現を確認することによって、造血幹細胞特異的な遺伝子発現パターンを示すか実証する。抗イルカCD34抗体は、造血幹細胞だけでなく、臓器全体に存在する血管内皮を認識するので、組織切片上のCD34陽性細胞が全て造血幹細胞であると断定できない。そこで、前年度に得られたCD34陽性細胞(造血幹細胞)を抗原として、イルカ諸臓器の他の細胞には反応せず、造血幹細胞のみに反応する特異的モノローナル抗体の作出を試みる。 個体発生学的または系統発生学的に造血が営まれている候補器官である脾臓、腎臓、肝臓等を中心に、イルカの全身諸臓器において、前年度までに得たイルカの造血幹細胞特異抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、造血幹細胞やニッチ細胞の存在を証明する。もし、抗イルカ造血幹細胞特異抗体が作製できなかった場合には、既知のCD34等のマーカー遺伝子群の発現パターン解析や、標的臓器の髄質における未分化血液細胞や造血像の電子顕微鏡観察によって造血器官を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イルカCD34陽性細胞の単離および選択に不可欠なプレート専用遠心器を購入する。またイルカCD34陽性細胞の単離およびモノクローナル特異抗体作製に必要な試薬として免疫磁気細胞分離法(MACS)付属試薬、培地、ウシ胎児血清等の薬品を購入する。
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Research Products
(1 results)