2012 Fiscal Year Research-status Report
クロマグロの環境刺激に対する反応行動発現モデルの構築
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23580269
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
鳥澤 眞介 近畿大学, 農学部, 研究員 (80399097)
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Keywords | 行動生理 / クロマグロ / 養殖 / 行動モデル |
Research Abstract |
高速遊泳や水深数百メートルに及ぶ潜水が可能となるよう特化したクロマグロは,太平洋を横断回遊するといった高い適応能力を持つ一方で,狭い空間内では生残・飼育が困難であるという適応特化の極端な両面を併せ持っている。 このクロマグロは近年その資源量の減少が世界的に重大な問題となっており,資源の回復と維持のための方策の実施が急務となっている。そのため,種苗生産から沖合域での浮沈式大型生簀による飼育に至るまでの完全養殖技術の確立が望まれている。 これらの実現には,特化の著しい本種の行動特性の把握に留まらず,環境刺激によって本種がどのような行動を発現するのかを明らかにしなければならない。 そこで,本研究ではクロマグロの刺激受容特性を生理学的,反応行動を行動学的に調べ,刺激反応行動の数理モデルを構築することで統合化し,外的刺激により対象魚がどのような反応行動を創発するのか,その行動誘発機構の解明を目的として研究を実施した。本年度は沖合養殖生簀で養成されている全長30cmから150cmにおよぶ孵化後数ヶ月から3年の養成クロマグロを対象として実験を行った。 行動モニタリングでは,ステレオカメラを用いた光学的手法による各個体の3次元位置座標の時系列モニタリングを中心として,バイオテレメトリー手法を用いた計測を併せて実施し,生簀内の様々な環境に遭遇したときのクロマグロの行動を記録した。これらから,当該魚の行動特性として3次元的な空間の利用特性および複数個体間の行動の相互作用・同調性を求めた。同時に生簀の環境モニタリングにより,照度・水温・溶存酸素量・流速および生簀網地の吹かれを測定した。さらに,引き続き実施しているクロマグロの視認能力および刺激受容の特性に関する研究の結果を併せて,これらの結果を数理行動モデルによる統合解析を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種苗生産されたクロマグロ幼魚から沖合の浮沈式生簀で飼育されている性成熟した親魚に至るまでの成長段階の供試魚を用いて,環境刺激に対する反応行動の誘発メカニズムを成長段階別に調べた。 生簀内で自由遊泳する魚群の遊泳行動をステレオ・ビデオカメラにより撮影・記録し,個体の3次元位置座標を抽出することで,3次元の運動解析を行った。この時の環境刺激は照度,水温,流れ,養成空間の変化を伴っている。 そのため,行動モニタリング結果から得られた行動特性と環境パラメータとの関係を表す行動モデルを導くための準備は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマグロの行動および刺激反応行動発現時の外部環境データは,多くのケースについて,詳細なデータが取得できたと考えている。これらの取得したデータを解析し,環境刺激により誘発された反応行動の数理モデルの構築を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
取得した実験データは,環境刺激により誘発された養成クロマグロの反応行動の数理モデル構築に向けて,順次解析予定である。 解析結果は国際学会や学術雑誌での発表を予定している。
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