2012 Fiscal Year Research-status Report
海洋の真核微生物ラビリンチュラ類が生態環境中の物質循環に与える役割の解明
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23580270
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
本多 大輔 甲南大学, 理工学部, 教授 (30322572)
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Keywords | 海洋生態系 |
Research Abstract |
ラビリンチュラ類の松花粉MPN法による現存量の測定を継続して行っている。少なくとも毎月1回,兵庫県夙川河口域1点と大阪湾内2点の合計3つの定点において,サンプリング,環境情報の測定,ラビリンチュラ現存量測定,バクテリア現存量測定を行った。さらに,松花粉MPN法の過程で,ラビリンチュラ類の無菌株の作製を行い,それぞれについて18S rDNA配列から系統的位置を把握した。 その結果,夙川河口域定点と大阪湾内定点では,ラビリンチュラ類の現存量および,構成する系統群にも違いがあった。特に河口域に比べ大阪湾内では現存量が1桁ほど少なく,河口域の生物活性の高さを示すことと同時に,このことは沿岸の局所的な領域に集中する物質を栄養として利用できることを示している。また,系統群ごとに利用できる物質に違いがあり,住み分けをしている可能性について示唆するものと思われた。 ラビリンチュラ類の珪藻捕食性についても調査を開始し,積極的に消化している可能性が示された。 また,Real Time PCRを用いて,DNA量から細胞数を推定する方法の開発も行っている。すでに確立した株を用いて,PCRによる特定配列の増幅量と細胞数についての検量線を作成することで,この方法の確立を目指している。いくつかの系統群において,特異的プライマーセットのデザインが完成した。 北海道沿岸,三宅嶋沖の外洋や深海などでもサンプリングを行い,現存量やラビリンチュラ類の多様性について調査した結果,これまでに把握されていたよりも様々な場所に存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
残念ながら,Real Time PCRを用いて,環境DNAに含まれるラビリンチュラ類のDNA量から現存量を推定する方法の開発が遅れている。特異的プライマーセットのデザインは,配列決定をした領域を増やすなどして改善することで,進めることができている。一方,環境DNAの精製法には検討すべき点が残っており,これを克服することで,具体的なデータにつなげることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプリングを継続し,松花粉MPN法による現存量の測定を行い,各定点から取得する株を用いて,18S rDNA配列決定をし,系統樹における位置を確定することで,種組成の遷移を把握する作業を継続する。 また,Real-Time PCR法による細胞数推定法の確立をする。特定的プライマーセットの完成と,環境DNAの精製法の確定を行い,具体的なデータを取得する。 ラビリンチュラ類が何を栄養源としているか,という根本的な問題に対し,珪藻捕食性が示唆される結果を得たため,2員培養の方法をより精度を高め,捕食過程の観察などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じているのは,昨年度の研究目標としていた「Real-Time PCR法による細胞数推定法の確立」が,十分と言えるレベルに達せず,これまでに蓄積している環境DNA試料に対する細胞数推定の実施ができていないからである。 そこで,今年度は,「Real-Time PCR法による細胞数推定法の確立」を改めて目指す。具体的には,注目すべき系統群に対する特異的プライマーセットと,環境DNAの精製法の検討を継続し,これらが完成してから,蓄積している環境DNA試料に対する細胞数推定の実施を行う。
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