2013 Fiscal Year Research-status Report
海洋の真核微生物ラビリンチュラ類が生態環境中の物質循環に与える役割の解明
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23580270
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
本多 大輔 甲南大学, 理工学部, 教授 (30322572)
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Keywords | 海洋生態系 / ヤブレツボカビ / 微生物ループ / 現存量 / 季節的遷移 |
Research Abstract |
ラビリンチュラ類の現存量変動と構成種の季節的遷移について考察することを目的に,兵庫県西宮市の夙川河口域,大阪湾奥,大阪湾中央の3つの定点で,細胞数計測による現存量変動の把握と構成種の解析を少なくとも毎月1回行った。 現存量変動では,春から夏にかけて,1つあるいは2つの大きな細胞数の極大(Thraustochytrid spike)が隔年で見られることを初めて明らかにした。得られた環境情報から,栄養源となる降雨による陸源有機物の供給と,海水温度の上昇に伴うラビリンチュラ類の活性化が,これらの極大を形成する原因と推定された。河口域の現存量は大阪湾に比べて10倍以上であることが示され,河口域でホットスポット的に生育していることが示された。その炭素量に変換したバイオマスは,バクテリアの1.6%であるが,栄養段階を少なくとも1つスキップして上位の捕食者に到達することが予想されるため,動物プランクトンへの影響力はバクテリアの16%以上となり,海洋生態系で無視できないものと判断された。 構成種については,サンプリングごとに少なくとも5株を分離して,それらの18S rDNA系統解析から同定を行った結果,8~10の主要な系統群を認識することができた。これらの系統群の出現時期は基本的に年ごとに決まっており,種の季節的遷移が起こっていることが示された。また,出現した時の海水の温度と塩分は,それぞれの系統群ごとに特徴があり,温度特性が季節的遷移を起こす要因である可能性と,塩分特性によって棲み分けが起こっている可能性を示唆した。 細胞数測定については,データ蓄積に成功した松花粉MPN法に加えて,Real time PCRによるDNA量から細胞数を推定する方法の開発も行った。しかしながら,後者については,DNA抽出法とラビリンチュラ類の細胞数が検出限界に近いことから残念ながら完成していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
松花粉MPN法による細胞数推定と構成種の特定については,順調にデータを蓄積することに成功し,概要で示した結論などを導くことができた。 一方,Real time PCR による細胞数推定には遅れがある。申請書に示したように,この方法の確立には多くの試行錯誤が必要であることは予想していた。昨年度までに認識された課題である,海水を処理するフィルター孔径の再検討,特異的プライマーのデザインなどについて,解決をめざしてきた。特異的プライマーについては,いくつかの主要系統群についてはデザインをすることができた。しかしながら,現場から得られるラビリンチュラ類のDNA量が検出限界に近いことや,現場海水に含まれる植物プランクトンや泥などによって,DNA抽出の効率が異なることが予想され,模擬的なサンプルの検討をしている段階で,残念ながら実際の現場のサンプルの解析をする段階になっていない。 また,発展的な課題として,大阪湾周辺で起こっているような,系統群が季節によって棲み分けているようなことが,他の地域でも観察されるかについて,ラビリンチュラ類の現存量が多いことが予想される西表島を対象に2013年6月と2014年2月に調査を行って比較した。これについては,現在解析中であるが,特に方法に問題はないため,順調に結果が得られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Real time PCR による細胞数推定法の開発については,今年度前半までに可能な範囲での検討を終了し,現場のサンプルの解析を完了させたい。Nakai et al. (2013) が,同様にReal time PCRによるラビリンチュラ類の現存量推定をした論文を報告したため,この方法も参考としたい。ただし,我々が本研究で得た多様な分離株の配列から,より良い方法の確立にもつながることが期待できる。 西表島を対象に2013年6月と2014年2月に調査を行った種組成の比較については順調に作業が進んでおり,今年度前半までに結果が蓄積し,比較が完了する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Real time PCR による細胞数推定法の開発が残念ながら終了せず,この方法の改良や検討を継続する必要が生じたため。また,発展的な課題である,西表島での季節間の種組成の比較について,2014年2月に採集を行った試料の処理が2014年3月末までに完了しなかったため。 Real time PCR による細胞数推定法について,可能な範囲での検討を終了させ,現場のサンプルの解析を完了することを目指すため,解析に必要な試薬類などの物品費として支出することを計画している。 また,西表島を対象に2013年6月と2014年2月に調査を行った種組成の比較について,今年度前半までに株の分離と遺伝子配列による同定を行って完了させるため,遺伝子配列決定やその作業について,謝金、その他として支出することを計画している。
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[Journal Article] TLC screening of thraustochytrid strains for squalene production2014
Author(s)
Atsushi Nakazawa, Yume Kokubun, Hiroshi Matsuura, Natsuki Yonezawa, Ryoji Kose, Masaki Yoshida, Yuuhiko Tanabe, Emi Kusuda, Duong Van Thang, Mayumi Ueda, Daiske Honda, Aparat Mahakhant, Kunimitsu Kaya, Makoto M. Watanabe
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Journal Title
J Appl Phycol
Volume: 26
Pages: 29-41
DOI
Peer Reviewed
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