2014 Fiscal Year Research-status Report
有害渦鞭毛藻シストの休眠および発芽の誘導・制御機構の解明
Project/Area Number |
23580272
|
Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
坂本 節子 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (40265723)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 有害有毒プランクトン / シスト / 発現遺伝子 / 休眠 / 発芽 |
Outline of Annual Research Achievements |
有毒渦鞭毛藻Gymnodinium catenatumのシストから得られたcDNAをランダムプライマーA22およびA29(和光純薬)で増幅して得られたPCR増幅産物の断片をクローニングし、遺伝子配列解析および得られた配列の相同性解析を実施した。その結果、得られた配列から同じ渦鞭毛藻類であるSymbiodinium sp.やHeterocapsa triquetraの光捕集に関与するタンパク質light-harvesting protein、同じく渦鞭毛藻Kryptoperidinium foliaceumのABC transporter ATP-binding subunitなどに高い相同性を示す配列が得られた。G. catenatumシストの発芽において、光は発芽の過程を促進させる役割を果たしていると推測される。しかし、休眠中のシストでは光合成色素(クロロフィル)の活性が確認されず、発芽に向かう過程でその活性が復活することが観察されており、光捕集タンパク質の発現は発芽における重要な反応の一つであると推察される。今後、このような観察と得られた光捕集関連遺伝子の発現の動態との関連を明らかにするため、定量PCRを用いて経時的な発現量の解析を検討している。 また、次世代シーケンサーを用いた網羅的mRNA解析による発現解析を実施するため、昨年度分離した1000細胞のG. catenatumシストのうち300細胞からtotal RNAを抽出した。解析には6μg以上で濃度200ng/μl以上の試料が必要であったが、得られたtotal RNAは全量で280 ng, 濃度5.6 ng/μlで、mRNA-Seq解析するのに十分な量・質RNAを得られなかった。この結果から、解析に必要な試料を得るためには少なくともシスト試料は6000細胞程度は必要になると推測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は本課題実施の最終年度となる予定であったが、計画していたG. catenatumシストの発芽に関連するより多くの発現遺伝子を得るための網羅的mRNA-Seq解析(発現解析)を実施することができなかった。理由として、網羅的mRNA-Seq解析が可能な量と質のRNAをシストから得ることができなかったことが上げられる。このため次年度まで事業期間を延長した。一方で、そのシスト期に発現している遺伝子のPCR断片の解析からは、同じ渦鞭藻類であるSymbiodinium sp.の光捕集に関与するタンパク質であるlight-harvesting protein等に非常に高い相同性を示す遺伝子配列が得られ、発芽に関与すると推測される機能性タンパク質の断片的な情報が少しずつ集積されてきている。このように研究は少しずつ進捗しているものの、当初の計画通りの進展には達していないため、自己評価は遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は300細胞のシストからmRNA-Seq解析のための分析試料の作製を試みたものの、次世代シーケンサーで分析できる十分な質と量の試料が得られなかったことから、次年度は条件を①シスト休眠時、②発芽誘導後48時間後の2つに絞って試料を調製し、mRNA-Seq解析を試みたいと考えている。分析の材料となるG. catenatumのシストについては、現在安定して形成させることができており、今年度より多くのシストを用いて研究を実施できる準備を進めているが、RNAの量的な問題が障害となる場合は、微量RNAの増幅技術を取り入れることも検討する。
|
Causes of Carryover |
シスト発芽に関連するより多くの発現遺伝子情報を得るため、次世代シーケンサーを利用した網羅的mRNA発現解析を実施する予定であったが、本解析実施に十分な質と量のRNAを渦鞭毛藻シストから得ることができなかった。これを解決するため、さらに多くのシストを得てから解析を実施することとし、シストの回収を進めていたが、年度内にmRNA-Seq解析までには至らなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
mRNA-Seq解析を実施するために必要な試薬や消耗品の購入および次世代シーケンサーによる配列解析の経費に充てることとする。
|