2012 Fiscal Year Research-status Report
水産食品におけるバクテリオシン耐性リステリア菌の動態と制御に関する研究
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23580274
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 浩司 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (40250500)
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Keywords | リステリア / ナイシン / バクテリオシン / 耐性菌 |
Research Abstract |
ナイシン耐性リステリアの耐性機構の解明を試み,以下のような結果を得た。 1.ナイシン耐性リステリア菌体とナイシンとの相互作用を調べたところ,ナイシン耐性株へのナイシン吸着量は, 親株よりも減少していた。また,ナイシン耐性株における菌体表面電荷の状況をシトクロムCの吸着性から評価した結果, すべての耐性株において親株よりも負電荷が低下していた。さらに, 有機溶媒親和性からナイシン耐性株の細胞表面疎水性度を調べ, その程度は3株の耐性株で異なるものであった。これまで, ナイシン耐性リステリアにおいて菌体表面疎水性の低下は, ナイシンとの疎水性相互作用を低下させるため, 耐性機構のひとつの要因と考えられてきたが,本研究の結果から菌体表面における疎水性の変化はナイシン耐性の獲得に伴う特性変化のひとつではあるものの, ナイシンに対する耐性機構において主な要因ではないと推察された。 2.ナイシン耐性リステリアの細胞壁分解酵素に対する感受性を調べたところ,ナイシン耐性株においてラビアーゼとリゾチームに対する感受性の低下が認められた。したがって, ナイシン耐性の獲得に細胞壁の構造変化も関与していると推察された。 3.ナイシン耐性株のタンパク質発現を調べたところ, 分離耐性株3株のうちATCC7644R株でのみ細胞膜に局在するタンパク質の発現が親株と比べて異なっていたことから,ストレスタンパク質の発現がナイシン耐性機構に関与していると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,リステリアによる食中毒リスクを低減するために,食品保蔵,特に水産食品保蔵へバクテリオシンであるナイシンを積極的に利用するための基礎的な知見を得る研究であり,特に水産食品へ応用するときに懸念されるバクテリオシン耐性リステリアの性質と耐性獲得機構を明らかにしようとするものである。本年度は,ナイシン耐性リステリア菌体とナイシンとの相互作用形態から,耐性機構を明らかにしうようと計画していたが,ほぼ当初計画通りの実験を行い,概ね良好な結果を得ていることから評価区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り,これまで得られた知見をもとにナイシン耐性菌にも効果を発揮する抗菌物質を探索し,有効なリステリア制御法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として17,010円が計上されているが,研究を滞り無く実施するため,この残額は平成24年3月上旬にすでに執行済みである。(4月末の支払い)
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Research Products
(1 results)