2011 Fiscal Year Research-status Report
魚類体表粘液糖タンパク質を基質に用いた新規グリカナーゼの探索
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23580281
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
濱 洋一郎 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00243999)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | O-グリカナーゼ / 糖質分解酵素 / O-グリカン / 粘質物 / 魚類 / ムチン |
Research Abstract |
O型糖タンパク質(ムチン型糖タンパク質)の糖鎖を根元から遊離させるエンド型酵素,O-グリカナーゼ(endo-α-N-acetylgalactosaminidase,EC 3.2.1.97)は,多様なO型糖鎖構造のうちの非常に限定された構造にのみ作用するものしか見つかっておらず, O型糖タンパク質の構造解析,機能解析の両面で大きな障害になっている.本申請研究は,これまでとは異なる基質特異性をもつ利便性の高いO-グリカナーゼの開発が目的である.本酵素は,魚類体表粘質物から分離した新奇糖鎖構造をもつ粘液糖タンパク質(O型糖タンパク質)を主な糖(炭素)源として培地に混合し,これを分解資化する細菌から探索する.この,水産物にしか見つかっていない糖タンパク質を基質に利用するO-グリカナーゼ探索手法が,本研究の最大の特徴である. 平成23年度は,研究計画に基づき,基質となる魚類粘液糖タンパク質の精製を中心に研究を遂行した.同時に,精製した糖タンパク質を使用し,目的酵素を産生する最近のスクリーニング実験も開始した.概要は以下の通りである. まず,スクリーニングに必要な魚類体表粘液糖タンパク質の分離精製を行った.分離精製方法は,すでに研究室で確立している方法を用いた. ついで,上記の糖タンパク質の調製と並行して,調製した魚類体表粘液糖タンパク質を用いて,これを分解資化する細菌(O-グリカナーゼ産生細菌)のスクリーニングに着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,ドジョウから基質である体表粘液糖タンパク質の分離と精製を行った.また,これと並行して,精製物を利用した目的酵素産生細菌のスクリーニングを開始した. まず,生きたまま凍結した魚体を半解凍後,エタノールを体表に振りかけ,ゼリー状に凝固した体表粘質物をかき取った.この体表粘質物を脱脂乾燥後,緩衝液中で超音波抽出し,さらにイオン交換クロマトグラフィー,ゲルろ過クロマトグラフィーにより分画することにより精製粘液糖タンパク質を調製した. また,この精製操作と並行して,この精製糖タンパク質を用いて,これを分解資化する細菌(O-グリカナーゼ産生細菌)のスクリーニングに着手した. 以上のように,平成23年度には,計画通り基質の精製およびスクリーニングを行ったため,研究はおおむね順調に進展していると判断出来る.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に則り,平成24年度は,O-グリカナーゼ産生細菌のスクリーニングを中心に実験を行う予定である. また,スクリーニングと同時に,本スクリーニング方法の妥当性についての検証を行うことも予定している.さらに,目的酵素を産生する細菌が見つかった場合は,この細菌を同定するための実験も開始する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように,平成24年度はスクリーニングを中心に実験するため,必要な試薬,ガラス器具に研究費を使用する予定である. また,次年度使用額に約47万円が計上されているが,これは設備備品のクリーンベンチが当初見積額よりも安価に納入されたため,および試料収集旅費を24年度用に保存したために生じたもので,試薬類の購入,細菌の同定および試料収集旅費として使用する予定である.
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