2011 Fiscal Year Research-status Report
トラフグにおけるフグ毒結合性タンパク質の分布と機能究明-性成熟の視点から
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23580282
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
荒川 修 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (40232037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高谷 智裕 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (90304972)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | テトロドトキシン / トラフグ / クサフグ / マフグ / 交雑フグ / PSTBP |
Research Abstract |
フグにおけるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の動態、ならびにそれに対する性成熟の影響解明に資するため、まず、トラフグに高毒性かつ早熟なクサフグをかけ合わせて作出した人工交雑個体(トラクサ)にTTXを筋肉内投与し、生殖腺を含む各部位への毒移行プロファイルについて検討した。その結果、筋肉内投与したTTXは、血液を介して速やかに他の部位に移行するが、卵巣への移行が際立っており、一旦肝臓に取り込まれた毒は、雌では卵巣、雄では皮に移行・蓄積することがわかった。次いで、トラフグとマフグの人工交雑個体(トラマ)を用い、より自然に近い投与法(TTX添加飼料を消化管内に経管投与する方法)でTTXを投与したところ、筋肉内投与の場合同様、消化管から吸収されたTTXは、血液を介してまず肝臓に、次いで皮膚に移行した。一方、血液を介したTTX輸送の分子機構解明に資するため、トラフグを対象に、ヒガンフグから分離されたサキシトキシン (STX)/TTX結合性タンパク質(PSTBP)の相同遺伝子を探索し、それらの無毒養殖トラフグにおける発現について調べた。すなわち、トラフグ概要ゲノムデータベースに対してPSTBPをクエリー配列としたBLAST検索を行ったところ、3つの候補遺伝子(Tr1-3)が見出された。RT-PCRにより養殖トラフグ各部位におけるmRNAの発現を調べたところ、Tr1とTr3については肝臓での発現が確認できた。さらに、血漿から得たPSTBPと同サイズ(約120 kDa)のタンパク質を硫安分画とSDS-PAGEで分離後、MALDI-QIT-TOFMS分析に付した結果、Tr1とTr3の遺伝子産物であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 TTXの体内動態については、肝臓や皮を対象とした研究はあるが、今回、早熟な人工交雑個体を用いることで、卵巣にTTXが顕著に移行すること、すなわち性成熟が毒の体内動態に関わることを初めて明確に示すことができた。さらに、トラフグのPSTBP相同遺伝子については、肝臓においてmRNAレベルで、血漿ではタンパク質レベルで発現していることを明らかにできた。試料入手の都合上、天然トラフグ成熟/未成熟個体の比較を行うには至らなかったが、現在、毒投与/非投与の養殖トラフグを用いてPSTBP相同遺伝子発現状況の比較を進めており、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、ほぼ当初の計画に沿って、トラフグ成熟/未成熟魚、ないし低月齢/高月齢魚につき、各部位におけるTr タンパク質アイソフォームの発現状況を、主にMALDI-QIT-TOFMSにより分析・比較していく。一方、九州大学との共同研究により、Trタンパク質に対する抗体供給の目処が立っており、これを用いてTrタンパク質の組織内微細分布についても検討を進め、毒の分布と対比することにより毒蓄積における同タンパク質の役割について推察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、実験が比較的スムーズに進み、試薬類・器具類等については、多くの部分をこれまでのストックで間に合わせることができたため、若干「次年度に使用する予定の研究費」が生じた。平成24年度に請求する研究費と併せて、主に実験材料(フグ)、ならびにMALDI-QIT-TOFMSや免疫染色のための試薬類・器具類の購入に充てる。また、本年7月に国際毒素学会(ホノルル)で成果発表を行う予定があり、一部を外国旅費として使用する。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] フグの毒による食中毒2011
Author(s)
荒川 修, 高谷智裕, 谷山茂人, 野口玉雄
Organizer
極限環境生物学会第12回年会(招待講演)
Place of Presentation
長崎大学(長崎県)
Year and Date
2011年11月27日
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