2011 Fiscal Year Research-status Report
海洋無脊椎動物を用いた有用難培養微生物のバイオエンリッチメント
Project/Area Number |
23580286
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
張 成年 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, グループ長 (70360766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 健太郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 研究員 (20371875)
竹山 春子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60262234)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 難培養微生物 / 海産無脊椎動物 / エンリッチメント |
Research Abstract |
ガンガゼ、サザエ、メガイアワビの3種を1水槽当たり各種3-5個体ずつ3水槽に収容した。飼育開始時と終了時に飼育海水濾過標本と餌藻類表面粘液標本を採取し環境細菌叢標本とした。給餌前に排泄された動物の糞便標本を採取した。1日後からアオサ、ホソジュズモ、カジメの3海藻種を32日間給餌し、33日目に糞便を採取した。各標本(約1gr)に20mlのPBS+人工海水を加えてホモジナイズし、500rpmで3分遠心後、上清を回収した。上清を12,000rpmで1分遠心後、沈殿に直径0.1 mmのジルコニアビーズ0.3 gを加え、2500 rpmで3分間振動した後、通常のフェノール・クロロフォルム法によりDNAを抽出した。抽出したDNAを鋳型とし、16S rDNAの全長をPCRで増幅後クローニングした。1標本あたり48個の形質転換コロニーについてインサートの塩基配列解析を行った。給餌前のガンガゼ糞では、Clostridium属主体のFirmicutes門とProteobacteria門が優先したが、給餌後はFirmicutes門が激減しBacteroidetes門が増加した。アオサ、ホソジュズモを給餌した個体では、優先種がProteobacteria門とBacteroidetes門であった。緑藻であるアオサとホソジュズモは構成多糖が類似しているため、類似の細菌群がエンリッチされたと考えられる。一方、褐藻であるカジメを給餌した個体では、優先種がFusobacteria門であり、緑藻給餌個体と異なった。サザエ、アワビの給餌前での腸内細菌叢は互いに類似していたがガンガゼとは異なっており、飼育終了時点で給餌藻類区間で糞中細菌叢は全種間で異なっていた。異なる餌により腸内細菌叢が変化すること、同じ餌を与えても動物種ごとで腸内細菌叢は異なることから、人為的なエンリッチメントが可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海藻類を摂食する海産無脊椎動物の腸内細菌は、藻類含有の多糖類を高効率に分解する消化酵素を合成していると考えられるが、殆どのバクテリアは難培養性であるため、有効利用は行われていない。そこで海藻食性(ウニは雑食)の海産無脊椎動物をバクテリアのインキュベーションポッドとして利用し、異なる海藻種を与え続けることによって腸内微生物群集の変化を誘導しバイオエンリッチメントを行うことによって積極的なスクリーニング法の開発そして最終的には海藻バイオマス変換酵素の効率的スクリーニングに繋げることを目的とする。今年度の研究により、人為的な腸内微生物群集変化の誘導とバイオエンリッチメントが可能であることが明らかにできたことから、3年間の研究期間のうちの初年度の目的は充分達成できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度では、餌料としての複数海藻種とインキュベーションポッドとしての複数動物種を用いて腸内微生物相の遷移を検討したところ、動物種及び給餌する海藻種によってエンリッチメントの状況が異なることが示唆された。また、無脊椎動物によって腸内微生物の変動があまり見られないものも見いだされたことから今後は、海藻を固定して、いくつかの海洋無脊椎動物に絞り込み、微生物フローラの変動を詳細に解析しつつ、動物種と給餌海藻種の組み合わせと給餌期間を決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用動物のうちサザエ、アワビ等の有用水産動物については購入する必要があるとともに、採取するための旅費、用船が必要となる可能性が高い。飼育施設については小型水槽に加えその周辺機器である濾過器、小型ポンプ、エアーブロアー、ヒーター、サーモスタット等が必要である。標本処理とデータ整理のための非常勤職員の短期雇用が必要である。分析用の試薬類と消耗品に加え、メタゲノム解析のための塩基配列解析外注が必要となる。
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