• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2011 Fiscal Year Research-status Report

ゲーム理論による農民参加型灌漑管理組織の持続可能性条件の解明

Research Project

Project/Area Number 23580287
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

近藤 巧  北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40178413)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords灌漑 / 協力 / 換金作物
Research Abstract

本研究は、ネパールの農村を念頭に置きながら、農民参加型灌漑システムの存立条件を明らかにすることを目的としている。ネパールの首都カトマンズの中心部から東へ約16kmに位置するサク村の灌漑システムを定点観察している。この村の農業に関しては、高度に組織化された水利組合が形成される気配はなく、上流優位の水配分が行われている。水利施設の維持管理においても、中・下流部の比較的大規模な農家が担っている。現時点においても、「米-夏馬鈴薯-冬馬鈴薯」の作付けパターンが支配的である。 しかし、現在では、米を全く栽培せず、雨よけハウスを利用したトマト栽培に特化する農家が十数戸見られる。この村で初めて、販売を目的にトマトを導入したのはインドの野菜・果物の販売人である。彼はトマト栽培の収益性が高いということから、村の農地を借り受けトマト栽培を開始した。また、トマト栽培への新規参入者として、村の外からやってきたタマン人が多い。村内の古くからの住民は少ない。彼らは、やはり借地によってトマト栽培を営んでいる。このように、サク村では、雇用労働力に依存した夏馬鈴薯の収益性が農業雇用労働賃金率の急激な上昇によって悪化しつつあり、灌漑に依存しなくても高収益をあげることのできる換金作物の栽培が進展している。総ての農民が力を結集して、灌漑水を確保し、これを農民間で平等に配分するための、水利組合の形成を目標とするのではない。サク村での各農家の行動は、自分自身が可能な範囲内で、恵まれない水配分に対処するというものである。 上流と下流の相互依存関係が欠如しているため、高度に組織化された水利組合が形成されないと考えられる。すなわち、上流農家は、下流への水配分の平等性を補償しなくても、何ら失うものがなく、営農の独立性が高いのである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

サクの調査結果は、農民同士がお互いに自己拘束性を有する協力関係を構築できないことを示している。サクの農民を大きく、水資源の賦存量に恵まれた上流農家と恵まれない下流農家に区分した場合、水利施設の維持管理という面からも、また、平等な水配分という面からも、理想からはほど遠い。維持管理に携わるのは、中・下流の比較的規模の大きい農家であり、上流農家は概して無関心である。それにもかかわらず、上流農家は優先的に水を使用する。下流農家は、馬鈴薯の作期を遅らせたり、要水量の少ない作物の導入を図るなど、自分自身が可能な範囲内で、農業所得の最大化を目指している。このように、上流農家と下流農家とは相互依存関係にない。特に、上流農家にとっては、たとえ下流農家と協力しても何ら自分らにとってメリットは生じない。もし、上流農家が下流農家に配慮すれば、既得権益化した水の優先的使用は不可能となるし、維持管理に際しても賦役を課されることになるからである。双方が協力関係を構築するためには、上流農家と下流農家との間に何らかの相互依存関係が必要である。このような仮説が明らかになったことは研究成果の一つである。

Strategy for Future Research Activity

双方が協力関係を構築するためには、上流農家と下流農家との間に何らかの相互依存関係が必要であるとの見通しを基礎に据えて、これを実証する予定である。成功している灌漑システムにおいて、農民同士の協力の実態を明らかにすることに目標を置く。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

アジアを中心に、水利施設の維持管理が良好になされ、水配分も農民の不満なくなされている水利組合を事例として、フィールドワークによって農民の協力関係の背後にある要因を明らかにする。研究資金は、そのための旅費として使用する予定でいる。また、調査に必要となる消耗品、論文の校閲料金としても支出する予定である。平成23年度は、ネパール滞在中に予備調査を予定していたが、天候不順のためフライトがキャンセルされ現地まで行くことができなかった。そのために、未使用研究資金が発生した。平成24年度には、この資金を調査旅費として支出する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2011

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 所得指標を除いた福祉の計測2011

    • Author(s)
      中野真衣、近藤巧
    • Journal Title

      開発学研究

      Volume: 22 Pages: 44-50

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2013-07-10  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi