2012 Fiscal Year Research-status Report
耕畜連携における地域連携型複合生産システムの形成に関する実証的研究
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23580290
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
秋山 満 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10202558)
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Keywords | 戸別所得補償制度 / 経営所得安定対策 / 耕畜連携 / 人・農地プラン / 大規模水田経営 |
Research Abstract |
本年度は、農政の重要課題であった「人・農地プラン」の取り組み状況も含めて、水田農業における耕畜連携システム、及び、地域連携型複合生産システムの形成に向けた、担い手育成確保と農地流動化の方向性、及び、新規青年就農者の確保へ向けた取り組み動向について、現地調査を含めて研究した。具体的には、担い手形成が進む大規模地帯として北海道、及び、栃木県・埼玉県・長野県等の「人・農地プラン」への取り組みと、戸別所得補償制度への対応状況、及び、複合型生産システムに向けた6次産業化や農商工連携の動きを中心に現地実態調査を中心に研究を行った。また、学会や農業構造問題に関わる研究会に参加し、その情報収集に努めると共に、会議の場で議論に参加して知見と情報収集に努めた。また、地元である栃木県においては、県が推進する「人・農地プラン」を中心とした学習・研修会に積極的に講師として参加するとともに、県行政の情報やJA等農業団体から情報収集を図ると共に、その取り組みに当たり研究成果の一部を私見として公表してきた。こうした取り組みと共に、水田農業の構造問題や地域農業活性化に向けた研究成果を中心に、文献収集と統計情報の収集及び分析に取り組んできている。 その成果の一部は、2011年度日本農業経営学会シンポジウムで、「水田作における規模問題」秋山満、日本農業経営学会(三重大会)で報告すると共に、秋山満「水田作における規模問題」農業経営研究・第49巻第4号・2012に取りまとめた。また、実態調査の一部は、『日本農業年報59 動き出した「人・農地プラン」』谷口信和編集代表、農林統計協会、2013年5月刊行予定に「栃木県における人・農地プランの取り組みの現状と課題」秋山満・神代英昭として取りまとめてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、戸別所得補償制度を契機とした耕畜連携の動向を、担い手の育成と農地利用の調整を軸として実態的に検討することを目的としているが、フィールドとして予定していた東北地域の一部が震災の影響もあり、実態調査が遅れている。また、昨年の政権交代により、戸別所得補償政策は経営安定所得対策へと名称変更すると共に、その見直しが現在検討途上にある。こうした政策枠組みの変更は今年度夏頃には明らかになる見込みだが、そうした政策変更の影響も検討対象となる。加えて、TPP交渉参加表明により、現地では様子見として動きが鈍くなっており、政策変更を視野に入れた現地調査が必要となっている。 こうした中で、地域計画の一環として「人・農地プラン」策定を契機として、担い手のリストアップ化と農地流動化の計画化、及び、世代交代に対応した新規青年就農者給付金制度、農の雇用事業を活用した担い手育成策が進展途上にある。ここではこうした人・農地を中心に、地域農業の6次産業化や組織化の方向性が検討されており、そうした地域計画の具体的取り組み状況を踏まえて、耕畜連携の仕組みづくりや複合的生産システムを目指した6次産業化や農商工連携のあり方が検討されているので、その実績や仕組みを中心に、上記の位置づけと方向性を検討してきているところである。 以上、震災の影響や政策変更の影響等により、研究計画の一部の遅れや方針変更はあるものの、全体としてみればおおむね順調に研究は進展しており、その成果の一部は学会報告や学会誌投稿、及び、共著における掲載等を通じて発表してきており、予想以上の成果を上げてきていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度となるので、引き続き実態調査を中心に研究を進めると共に、文献収集と整理、及び、統計収集と分析を進め、成果報告書の作成に向けた研究を進める予定である。但し、現在、前提となっていた戸別所得補償等の政策変更が進展途上にあり、そうした影響等も含めた検討が必要である。 そのため、最終報告書では、研究課題に関わる文献等における論点整理と共に、政策の仕組みとその変更の影響等に関しても考察を行い、本研究の位置づけを明確化する。次に、センサス等の統計がようやく公表されてきたので、こうした統計分析により水田農業を中心に、統計分析で構造変動の現段階を検討する。第3に、これまで行ってきた実態調査と今後の実態調査を踏まえて、耕畜連携と地域連携型複合生産の現状と課題を実態的に整理していく予定である。以上を踏まえて、水田農業を中心に、耕畜連携を軸とした地域連携型複合生産システムの課題を、担い手の育成、農地流動化と担い手への集積、複合型農地利用に向けた利用調整手法等の農地問題を中心に整理すると共に、経営体の育成に向けて、大規模経営体の動向、集落営農等の組織経営体の動向、及び公協型担い手や農外からの参入形態を含めて、人や経営体に着目した次世代型経営のあり方と地域における担い手間の連携方式に関してを検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は最終年度に当たるので、引き続き実態調査を中心に研究を行う予定であり、そのための旅費と調査補助員の謝金を中心に研究費を使用する予定である。また、戸別所得補償や政策変更に伴う水田農業関連の文献・資料収集のために、物品費が必要である。また、成果報告書の作成に向けて資料整理や製本等の諸経費が必要となると見込んでいる。
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