2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本農村における土地担保の展開と地主制に関する研究
Project/Area Number |
23580291
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
大栗 行昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50160461)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 農業経済学 / 農業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治期には新しい土地担保制度が整備され,質権,抵当権,買戻などの新たな担保が登場する一方,質地請戻し慣行など近世的な担保慣行も残っていた.新しい土地担保,特に買戻の慣行はいかにして成立したのか.新旧の土地担保は互いにどのような関係をもち,その関係は資本主義の進展や農村を取りまく諸状況の変化とともにどう変化したのか.これらの担保は地主制の成立や後退にどう関わったのか.本研究は,各地に保存されている一次資料を利用して,近世から近代に至る土地担保の構造と変化の過程を地主制の動向と関わらせて考察することを目的とする. 本年度は,買戻の成立・展開を明らかにしようとした.資料の収集と分析により,次の事実が明らかになった. 明治初年,土地売買・担保制度の成立によって,近世以来の質地請戻し慣行(質入・質流から何年たっても,元金を返済すれば元の持主が土地を取り戻せる)は存立の根拠を失った.転化すべき形態を探していた慣行にとって貴重な存在となったのが,買戻という担保であった.従来同様の流地の取戻しや年季売(本物返),長い期間をかけた取戻し,所有権を金主に移すことによる高額借入・低金利などが期待できたからである.明治10年代後半のデフレ期は,売渡地を取り戻す正当性を失った売主が(買主の徳義心を引き出すことで)買戻特約を獲得できた特別な期間となった.一方,高利貸資本が貸付と同時に担保の所有権移転を強いることも行われた.こうして繁栄した買戻慣行が,民法に買戻の規定を保存させた.
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Research Products
(4 results)