2012 Fiscal Year Research-status Report
農家の労働供給分析の新たな実証法と中国農家のマイクロデータへの応用
Project/Area Number |
23580299
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
園田 正 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60329844)
|
Keywords | 確率的生産フロンティア / 中国の農家 / マイクロデータ / 労働供給 |
Research Abstract |
中国の農家がより多くの時間を賃金労働(市場労働)に配分して低所得を改善しない(できない)現状を理解するため,本研究は中国農家のマイクロデータを利用し,その原因を明らかにする実証法の提案を主な目的としている。本年度は,昨年度得られた知見(中国の農家の世帯主は,野菜や畜産の生産活動において家族を手伝うため,労働市場に参加しにくい)に関連して,世帯主の労働市場への参加が農業生産性に与える影響を,確率的生産フロンティア分析により検証した。具体的には,世帯主が労働市場に参加する世帯としない世帯のグループに分類し,それぞれについてコブ=ダグラス型の確率的生産フロンティアを推定する。この推定結果にもとづき,各グループの生産技術水準と技術効率を比較した。その結果,世帯主が労働市場に参加する場合,経済発展が進んでいる東部では技術効率が低まることがわかり,その原因は世帯主の不在による経営効率の低下,高齢者による農業労働の増加にあると推測された。他方,経済発展が遅れている西部では,同じ場合に技術効率は高まるが,生産技術水準が低まることがわかり,その原因は賃金所得の増加による信用制約の緩和,伝統的な生産技術の維持にあると推測された。この結果を得る途中と原稿にまとめた段階で,ノースカロライナ州立大学のグッドウィン教授,ルイジアナ州立大学のミシュラ教授と意見交換をおこない,結果に関する地域差が中国の農村政策に関して興味深い意義をもたらすことを見出せた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,世帯主と配偶者の労働供給モデルについても推定法を考案する予定であったが,アイディアは出たものの,最終的な推定結果を得るには至っていない。とはいえ,確率的生産フロンティアモデルによる分析を新たに加えることにより,中国の農家がより多くの時間を賃金労働に配分しない(できない)状況を理解する上で,別の方法を提供できたという意味では,本課題の研究は進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の目的どおり,世帯主と他の世帯員(特に配偶者)の労働供給モデルの推定についても研究するが,確率的生産フロンティアモデルによる分析もさらにおこない,中国の農家がより多くの時間を賃金労働に配分しない(できない)状況の理解を深めるとともに,適切な政策に関する考察をおこなう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究推進がやや遅れたため,海外出張による意見交換を1回実施できなかった。このため,次年度に出張期間を延ばすことで遅れを取り戻す予定である。
|