2011 Fiscal Year Research-status Report
環地中海における農業生産と「地中海連合」域内の食料貿易に関する研究
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23580300
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
末原 達郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00179102)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地中海連合 / 環地中海農業 / 食料貿易 / スペイン / モロッコ / イタリア / チュニジア / フランス |
Research Abstract |
当初、地中海のアフリカ側諸国としてチュニジアを想定していたが、チュニジアでジャスミン革命が起こり政情が不安定になったため、本年度はモロッコのみを訪れて、食料貿易の実地調査と食物の市場調査を行なった。地中海のヨーロッパ側諸国につては、予定通り、スペインとイタリアにおける食料生産と食料貿易の調査を実施した。スペインにおいては、(1)地中海連合の全体構造に関する基本的な資料の収集行なった。(2)スペインにおける、国家を単位とした農業生産と食料貿易に関する統計的資料の収集を行なった。(3)バレンシア州における食料生産の調査を行なった。この中には、アルブフェラ湖周辺農村におけるスペイン産米生産の調査も含まれる。イタリアにおいては、(1)イタリアにおける、国家を単位とした農業生産と食料貿易に関する統計資料の収集と資料分析を行なった。(2)ピエモンテ州において、小麦生産、トウモロコシ生産、畜産加工、果樹栽培に関する農村調査と聞き取り調査を実施した。ピエモンテ州における食品流通と農産物販売に関する調査を行なった。(3)ヴェルチェリ村周辺におけるスペイン産米生産の実態調査を行なった。モロッコにおいては、(1)乾燥地帯における農業生産と食料輸入に関して、基本的な資料収集を行なった。(2)カサブランカ、ラバト、メクネス周辺において食料生産と市場調査を行なった。本研究は、ヨーロッパ南部と北アフリカが、食料貿易を通してどのように結びつき、それが各国の農業生産にどのような影響を与えているのか、また、地中海連合の枠組みがどのような変化を与えたかを明らかにするのが目的である。本年度は、それぞれの調査国での基本的な統計資料と情報の基礎を収集することができた。また、農業生産の実態調査を、イタリア、スペイン、モロッコにおいて開始することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨーロッパ側の調査に関しては、スペインおよびイタリア両国において食料貿易に関する基本的な統計情報の確保することが可能になった。さらに、地中海を挟んでモロッコにおいても、モロッコ王国政府によって収集され発表されている、農業生産に関する基礎統計資料を収集することができている。実態調査に関しては、ヨーロッパ側のスペインで実施を開始している。イタリアにおいても、北部のピエモンテ州を中心に実施した。ヨーロッパ側の調査は、予定通りに進行し、達成していると考える。北アフリカ側では、チュニジアでジャスミン革命が2011年1月に起こり、政治情勢が不安定となり、調査が行なうことが不可能になった。このため、北アフリカの調査地の一つであったモロッコにおいて、急遽、実態調査を開始することになった。北アフリカ側の調査は、以上のような理由により、チュニジアでは、やや遅れているが、モロッコの調査に関しては、逆に予定より早く開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヨーロッパにおいては、フランスとスペインで農業生産と、地中海を中心にした食料貿易の研究を継続する予定である。フランスに関しては、次年度から調査を開始することとなるが、既に研究協力の蓄積があり、順調に進むと予測される。地中海調査の中心であるモンペリエのアグロポリスにおける政府研究機関を訪れる予定である。なお本年は、ポルトガルで世界農村社会学会が開催される予定であり、本研究の一部を同大会で報告する予定である。北アフリカに関しては、もしチュニジアの政情の安定化が進めば、チュニジアでの予備調査を試みる予定である。チュニジアでの調査が可能であれば、チュニジアにおいて果樹栽培を中心とした農業生産と食料生産の実態調査、食料貿易による食料輸入の研究を行なう予定である。もし、政情の安定化が見られない場合には、チュニジアを除き、モロッコにおける実態調査を継続する予定である。現在の情報では、チュニジアでの調査が可能な状態にあると判断している。また、北アフリカの調査には、研究協力者である大学院生と協同で調査を行なう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
北アフリカの調査では、モロッコとチュニジアを調査実施国とする。チュニジアにおいて、政治状況が安定し治安が回復した場合には、チュニジアでの農業生産と食料輸入に関する基本的な情報調査を行なう予定である。チュニジアでジャスミン革命が起こった重要な理由の一つとして、食料品の高騰が挙げられている。食料価格の経年変化や食料輸入における調査を行なう予定である。ヨーロッパ側の調査では、次年度はスペイン、フランスを対象国とする。フランスでは次年度から調査を開始することになるので、国家レベルにおける農業生産の変化と地中海貿易に関する統計調査と文献を収集する。スペインでは、モロッコとの関連産業、特に農産物加工と輸出に関する調査を行なう予定である。フランスおよびモロッコの調査に関しては、研究代表者とともに研究協力者の大学院生が調査を実施する。なお、昨年度の残額が2024円発生しているが、これは予定されていた整理用の文具の購入を控え、年度末の使い切りを避けるために取った措置であり、次年度の早々にも使用する予定である。
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Research Products
(2 results)