2011 Fiscal Year Research-status Report
農村における生物多様性保全:理想を現実にする制度を探る
Project/Area Number |
23580302
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 耕太 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (50263124)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 保全制度 / 政策評価 / インセンティブ / 農業と環境 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「制度」と「農村における生物多様性保全」の関係を農家や消費者が従う誘因に注意しつつ理論的に解明するとともに最新の計量経済学的手法を用いた実証分析によって有用な制度の特徴を明らかにすることである。 今年度は文献調査及び理論研究を行うと同時に、次年度以降に用いるデータの収集と整理を行った。文献調査においては生物多様性保全水準に関する調査と制度に関する調査を網羅的に実施した。生物多様性保全水準に関する調査では、保全にかかる費用および生物多様性損失のコストに関する研究結果を地域別に収集し、各農村で生物多様性の保全が最適な水準で行われているかを検討した。制度に関する調査では、市場以外の制度として、ボランティアやオークションなどを活用する生物多様性保全制度が政府やNPOにより国内外で様々試みられているが、保全水準が明らかになった地域を中心にした、生物多様性の保全制度の詳細を調査した。その際、1、どのような制度があるか、2、その制度はどのような仕組みなのか、3、主な利害関係者は誰か、4、各関係者にはどのような行動が許されているのか、そして、5、各関係者の選択がそれぞれの利得にどう影響するかに着目し、情報をとりまとめた。次年度の実証分析のためのデータ収集においては、先行研究にはとどまらず、TEEBの報告書やOECD Environmental Dataなどから利用可能なデータを検索・収集し、地域別年度別のパネルデータを作成しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的にてらし、必要となる文献調査やデータの整備は順調に進んでいるが、現地における補足のヒアリング調査を実施できなかったので、そう判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に沿って着実に研究を進めていく予定であるが、本年度文献調査に予想以上の時間がかかり、フィールドの絞り込みが遅れ、ヒアリング調査によるデータの補足に十分時間が割けなかったので、来年度のうちにこの遅れを取り戻すよう進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度実施できなかったヒアリング調査によるデータの補足を含め、データ収集を行うとともに、実証分析を開始する。実証研究では、第一段階での理論研究の結果をもとに実証モデルをつくり、パラメータの推定を行う。この実証研究は、理論研究から有用であると思われる保全制度の特徴に関して実証的な有意性を検証し、ある地域で成功をおさめた制度が他の地域でも有用かといった問いに答えるものである。モデル化にあたっては、文献調査で得られた各制度の特徴とその地域での保全水準を体系的に分析し、各制度に従って関係者が合理的に行動したときの帰結として、現在の保全状態に説明を与える。さらにそのモデルを用いて、制度的特徴を変化させた場合の均衡の変化を分析する。
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Research Products
(6 results)