2012 Fiscal Year Research-status Report
農村における生物多様性保全:理想を現実にする制度を探る
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23580302
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 耕太 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (50263124)
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Keywords | 生物多様性 / 保全制度 / 政策評価 / インセンティブ / 農業と環境 |
Research Abstract |
2002年に締約国間で合意した生物多様性条約2010年目標は達成されず、生物多様性の損失が続いている。理論的には、市場経済に任せていると生物多様性が最適な水準に保たれないということがわかり、市場以外の制度として、ボランティアやオークションなどを活用する保全制度が政府やNPOにより国内外で試みられている。しかし、保全の重要な担い手である農家に過度の負担が集中する制度も多く、持続可能性に疑問が残る。本研究の目的は、「制度」と「農村における生物多様性保全」の関係を農家や消費者が従う誘因に配慮しつつ、理論的に解明するとともに最新の計量経済学的手法を用いた実証分析によって有用な制度の特徴を明らかにすることである。 今年度は、前年度に引き続き、先行研究の丹念な整理はもとより、ヒアリング、インターネットによる情報収集を行うとともに、TEEBの報告書やOECD Environmental Dataなど広くデータ収集を行い、パネルデータを作成し、実証分析を開始した。実証研究においては、初年度に得られた理論研究の知見を基礎に、現実を大胆に線形近似した実証モデルをつくり、パラメータの予備的な推定を行った。これは、理論研究から有用性が示唆される保全制度の特徴について実証的にその有意性を検証するとともに、ある地域で成功をおさめた制度が他の地域でも普及可能かどうかという問いに答えようとするものである。モデル化にあたっては、文献調査で得られた各制度の特徴とその地域での保全水準を体系的に組み込み、各制度に従って関係者が合理的に行動したときの帰結としての現在の保全状態を解釈し、記述しようとするものである。さらにそのモデルを用いて、制度的特徴を変化させた場合の影響を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的にてらし、必要となる研究は順調に進んでおり、昨年課題となっていた補足事項への対応も今年度中に十分行うことができたので、そう判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に沿って着実に研究を進めていく予定であるが、次年度が最終年度であるため、その成果を論文の形や学術講演会で広く社会に還元していくことに重点を置いていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き実証分析を行っていくが、主要な保全制度に関する文献調査およびヒアリング調査により明らかにされた保全の重要な担い手である農家や資金提供者が従う誘因と利得構造を一層明確化し、保全制度の現状を合理的な均衡状態として説明し、さらに、モデルを用いた分析により、最適水準に近い保全を現実に実現し得るための経済環境を特定する。制度効果の実証分析においては、理論研究の結果をもとに、制度が保全水準に与える影響を解明する。そして、以上の方法で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を順次行っていく。
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Research Products
(2 results)