2011 Fiscal Year Research-status Report
農業における過剰就業の消滅と所得格差の変化―インドネシアの個票データによる分析
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23580303
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
本台 進 神戸大学, 国際協力研究科, 名誉教授 (70138569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 和敏 長崎県立大学, 経済学部, 准教授 (40304084)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 過剰就業 / 所得格差 / 経済発展 / 開発途上国 |
Research Abstract |
1. 本研究においては、人口2億3千万人を擁するインドネシアのデータを使用し、農業部門において過剰就業が消滅した州とそれがまだ存在する州にグループ分けし、両グループの所得格差とその要因の差異を時系列的に分析した。2. 州別に過剰就業の有無を区別するために、農業賃金率の変化、農業労働力の限界生産性、業種別の貧困世帯分布などを総合的に見ると、インドネシア全体では過剰就業が消滅するルイス転換点まで到達していないことが分かった。しかし州別に見ると、バリ州では2010年までに既に転換点に到達していた。次に、北スマトラ州では実質農業賃金率の動きや労働力の限界生産力の大きさは転換点に到達した水準であった。しかし農村失業率や貧困世帯分布ではその様になっておらず、まだ転換点に到達したとは言えないが、まもなく到達する可能性が高い。それ以外の州では労働力の限界生産力については転換点到達レベルにまでになっている州もあるが、他の指標では転換点到達のかなり以前の状況であり、転換点到達までにまだ時間がかかることが分かった。3. 所得格差が両グループにおいてどのように変化したかを時系列的に見ると、過剰就業が消滅したグループにおいては農村における所得格差は縮小してきた。これに対して、過剰就業が消滅していない州においては、格差の縮小傾向が起こっていないことが分かった。4. 両グループは同じ国に属し、マクロ経済環境が同一であるため、グループ別に所得格差とその要因の差異の解明が容易となる。この方法で、経済発展の各段階における所得格差およびその要因を分析すると、経済発展と所得格差の関係をより簡単に解明することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の三つの理由による。1. インドネシア国内の32州のうち、経済的および地理的に重要で、かつ州別データが利用可能な12州について、名目農業賃金率の変化、実質賃金率の変化、農村における失業率の変化、労働力の限界生産性の水準により、次の3グループに分類にすることが可能となった。第1グループは過剰就業が消滅した州(バリ)、第2グループはそれが消滅していないがまもなく消滅すると思われる州(北スマトラ、南カリマンタン、スラヴェシー各州)、最後のグループは消滅に今後かなりの時間を要する州(中部ジャワ、東ジャワなど)である。2. このように州別区分において、セクター別貧困世帯分布の変化を見ると、第1グループでは農業セクターにおける農村貧困世帯数が州全体の世帯数の1パーセント未満へと著しく減少した。第2グループにおいては、それが約3パーセント程度となった。最後のグループにおいては、それが4パーセントを超えていた。このように名目農業賃金率、実質農業賃金率、農村における失業率化、労働力の限界生産性の水準などにより、各州をグループ化すると、それぞれの特徴が明確になった。3. 所得格差の変化を比較してみると、第1グループでは縮小、第2グループにおいてはほぼ変化なし、最後のグループにおいてはやや拡大傾向であることが判明した。したがって、過剰就業の有無と所得格差の変化の方向の関連性がほぼ明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. これまでに行った州のグループ分けに基づき、1992年以降の所得格差を計測し、各年毎に、その変動を教育レベル、職種、就業セクター、性別、年齢層などの世帯主属性に分解し、各属性の所得格差への寄与度を計測し、グループ間における各変数の寄与度の変化を分析する。 2. 次に、グループ毎に世帯主の教育レベル、職種、就業セクター、年齢などを独立変数として、1992年~2010年の各年のミンサー型所得関数を推計し、教育投資の収益率を計測し、教育レベル別の両グループの収益率の差を求め、グループ間の差異を時系列的に分析する。3. 各世帯主属性の所得格差への寄与度の計測については研究代表者が主に行い、所得関数に関する計測については研究分担者が主に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する研究費が発生した理由は、当初、購入を予定していた個票データのうち、社会経済調査2006年分と農業生産費調査1998年分が購入できなかったためである。社会経済調査2006年分はインドネシア統計庁におけるチェックが十分でなく、データが利用可能な状況ではなく、また農業生産費調査1998年分は経済危機時に収集されたデータであり、何処に保管されているか不明のため、入手できなかった。 本年度に入手できなかった個票データの代替として、次年度には社会経済調査2011年分、労働力調査2011年分、農村賃金調査2011年分の入手を試みる。これら個票データの入手および資料収集のために、ジャカルタでの現地調査(6泊7日)を2回実施する予定である。 さらに次年度においては、今後の分析手法や分析結果の整合性確認の目的で、研究分担者と打合せのため、神戸から佐世保への出張を2回実施する。また関連資料収集のために、神戸から東京への出張を2回に実施する。 これらの研究活動に関連して必要となる消耗品の購入や複写費への支出も行う。
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Research Products
(4 results)