2012 Fiscal Year Research-status Report
中山間地域の営農システム再構築のためのコア的地域主体の諸形態・存立条件と成長戦略
Project/Area Number |
23580318
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柏 雅之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40204383)
|
Keywords | 中山間地域 / 集落営農法人 / 市町村農業公社 / イギリス(ウェールズ) / 個と集団の軋轢 |
Research Abstract |
中山間地域の新たな担い手システムに関する研究を行った。まず、鹿児島大学農学部において、県内中山間地域農業の新たな担い手の動向に関する聞き取り調査と資料収集を行った。とくに民間非営利組織や市町村農業公社による担い手システムのあり方に焦点を置いた聞き取りを行った。その他、岩手大学や龍谷大学政策学部において、前者では震災後の地域農業再生の実態と展望等について、後者では農村ガヴァナンスのあり方に関する聞き取り調査を行った。 広島県中山間地域農業の担い手の動向に関する聞き取り調査と資料収集を行った。まず県庁で概況調査を行い、集落営農法人の新たな動向と意義と課題について情報収集した。県庁に続き、広島県農業会議で個別借地農業経営や集落営農法人に関する聞き取り調査と資料取集を行った。 第2回目の広島県での調査では、県農政における集落営農法人推進の動向と展開過程の聞き取りと資料収取を行った。とくに当時の責任者であった課長クラスからの聞き取りを中心とした調査であった。また、元広島県農政担当職員で、現在、広島経済大学の教員からは、県内全域の集落営農法人の実態と課題に関する詳細な聞き取り調査と資料収集を行った。 イギリスの衰退地域内発的発展で有為な実績を上げてきたウェールズの農村社会的企業であるPLANEDの実態調査を行った。さらに、農村ガバナンスや衰退農村政策のあり方に関する聞き取り調査と資料収集を行った。農村ガヴァナンスは日本の中山間地域農業振興にとっても焦眉の課題となるからである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北陸地域等での実態調査を通して、中山間地域等直接支払制度の直接支払い金を特定のコア的担い手経営体に集中することで支援する方式の論理と経済的意義およびその限界の分析は順調に行った。中山間地域のコア的担い手経営主体を社会的企業と位置づけ、そのメルクマールや意義をコスト論から位置づけることも行いえた。また、集落営農法人における個と集団との軋轢の解消に関する分析にとりかかりつつある。つぎに農村ガヴァナンスの研究に関してはウェールズの社会的企業の調査を通して進みつつある。 ただし、大学内の執行部に再選されるなど予期せぬ事情の下に学務の多忙さが急増する中で、当初期待した集落営農法人の大規模な調査実施は立ち遅れている。その挽回を期したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
国内調査においては、広島県内の集落営農法人の大規模な実態調査をおこなう。また、従前に行ってきた北陸地域とくに富山県南砺市の利賀と五箇山の農業公社の意義と課題、新潟県上越市清里地区および十日町市での担い手法人の経営展開、さらに新潟県関川村の山間地での大規模借地型家族経営の経営管理システムに関する分析を中心に、中山間地域の新たな土地利用型農業の担い手システムの研究を進行させたいと考えている。 また農村ガヴァナンスについてもイギリスの農業・農村政策や地域再生政策の資料調査や実態調査を通して引き続き行っていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内旅費では、広島県内の集落営農法人の調査を数度にわたって実施する。また、富山県南砺市での市町村農業公社の調査、新潟県上越市や十日町市での担い手法人の調査、さらに新潟県関川村での個別借地型大規模家族経営体の調査、さらに長野県飯島町の山間地担い手法人の調査のために主として用いる予定である。 国外旅費は以下のようである。農村ガヴァナンスに関してイギリスから学びえる者の調査では、英国図書館やロンドン大学(LSE)図書館、バーミンガム大学図書館などでの資料調査や、実態調査をとおして行っていく予定である。
|
-
-
[Book] 農村計画学2012
Author(s)
柏 雅之(共著、千賀裕太郎編)
Total Pages
本人執筆:92-97,130-134
Publisher
朝倉書店
-