2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580323
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Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
清水 純一 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70356294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 徹男 明治大学, 農学部, 教授 (60409498)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際食肉市場 / アグリビジネス / 多国籍企業 / パッカー / 産業内貿易 / 米国 / ブラジル / JBS社 |
Research Abstract |
まずブラジルに関しては、食肉の需給について、基礎的データを時系列で整理するとともに、関連文献の収集と論点整理を行った。次に、この結果を踏まえて、ブラジル国内で実態調査を実施した。この調査では、農務省・国家食料供給公社・外務省等の政府機関に加え、JBS社(世界最大の食肉パッカー)、日系商社、シンクタンク、牛肉輸出業協会等の民間関係機関を訪問して、日本では入手不可能なデータ・文献を収集する他、専門家と意見交換を行った。この結果、まず、ブラジル国内では肉の商品別(牛肉・豚肉等)の市場で「規模の経済」による寡占化が進行していること。同時に大手パッカーは国境を越えたM&Aにより、牛肉・豚肉・鶏肉をワンセット取りそろえた「範囲の経済」をも追求していることが明らかになった。 米国に関しても、まず食肉関連の統計・データの整理、分析を行った。具体的には、貿易データを利用して、米国の農産物貿易全般の近年の傾向とその中における食肉貿易の役割、特徴について整理、検討した。その結果、近年の米国の貿易は全般的にNAFTA域内貿易と対アジア、特に対中国貿易、に大きく傾斜している実態が明らかになった。食肉に関しては、日本を最終消費地とするNAFTA域内の分業体制が構築されている点が分析結果から明らかになった。 このような分業体制の中で、ブラジルのパッカーであるJBSがアメリカ国内におけるシェアを拡大している点が注目される。JBSの米国内での事業展開は、必ずしもブラジル国内の食肉生産とリンクしているわけではない。このことは、ブラジル企業のグローバル化という側面を示しており、注目すべき点である。また、JBS社は従来の米国の大手パッカーと競合関係にあることから、同社のアメリカ国内における今後の事業展開は非常に注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラジルに関しては研究実施計画の23年度部分をほとんど漏れなく実施した。 米国に関しては、統計データの整理と加工に関しては予定通りに研究を実施したが、実態調査に関しては実施できなかった。 ただし、23年度の実態調査はブラジルがメインであったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は前年度の食肉需給の分析を続けることに加え、ブラジル・米国とも飼料作物の需給と国際貿易が主要課題となる。そのため、両国とも、まず飼料作物の需給に関する統計データ・参考文献の収集と分析を行う。その後、これを補完するため、両国で実態調査を行い、日本では入手不可能なデータ・文献の収集を行うとともに、関係者へのインタビューを実施する。 米国に関しては、前年度に実態調査を実施できなかったことから、飼料作物に加えて食肉に関する事項も併せて調査する。その際には、米国における大手パッカーの事業展開について、近年の詳しい動向を把握することに重点を置く。そのために、特に米国及びブラジルの大手パッカーがどのような事業戦略を有しているのか、米国と他の生産国、及び最終消費国の関係をどのように描いているのか、等について注目して調査を実施する。これにより、新興国であるブラジルと米国との貿易関係など、これまでほとんど注目されることのなかった食肉貿易の構造解明が可能となる。加えて、米国とブラジルの農産物貿易全体の構造的分析の枠内において、食肉産業における両国間の緊密化する関係について分析を実施する。 以上の他、米ドルとブラジル・レアルの為替レートの変動が両国の食肉貿易関連企業に与えた影響に関する分析も開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ブラジル・米国とも現地実態調査が主要な研究手段となるため、交付申請している直接経費1,900千円の中で、旅費が1,349千円と大きな割合(71%)を占める。ブラジルに関しては、現地で「ポルトガル語-日本語」通訳を人件費・謝金の中から雇用する予定にしているため人件費・謝金として451千円(24%)の支出を予定している。残りの5%は物品費とその他の合計100千円である。 平成25年度は最終年度であるため、実態調査は実施せず、3年間の研究を取りまとめた報告書の印刷と成果報告会の開催に要する費用のみを支出する予定である。
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