2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580325
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
奥山 武彦 山形大学, 農学部, 教授 (20343767)
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Keywords | 地すべり / 地下水 |
Research Abstract |
2009年融雪期に大規模な滑落を起こした鶴岡市七五三掛地すべりBブロックの後背地の地下水位,水質の連続観測により,2012年春に3mを超える積雪が2ヶ月で融雪流出した際には地下水の押し出しが先行したことを確認できた。ブロック冠頭部直上における間隙水圧測定と層別採水分析により,融雪水の浸入が連続して飽和深度の拡大に加えて,地下水水頭の差による斜面下方への流動が認められた。棚田の浸透防止工施工は,浸入能を80分の1まで低減して涵養抑制効果が確認できた。表層内の流動によるブロックすべり面への地下水供給を防ぐために水抜きボーリングの配置が効果的である。Bブロックに隣接する大規模Dブロックは深度約100mにすべり面があることが判明して,ディープウエル,大深度集水井による地下水排除工が設置されている。排除された地下水の水質分析の結果,重炭酸カルシウム型の水質が卓越するが,春期は夏・秋期より重炭酸イオン濃度の低下等の変化があり,深部地下水も融雪浸透の影響を受けていることがわかった。地下水の水質は場所による差異を示し,ブロック側端の方向と調和性が見られることから,活動により形成されたブロックおよび周辺の構造が流動にも大きく関わっていることが考えられる。本地域は砂質化して透水性が大きい強風化玄武岩層が優勢であり,降雨,融雪等による地下水供給に関わっており,また,下層の泥岩,凝灰角礫岩層に発達する亀裂が浸透ネットワークを形成していると考えられる。大深度のすべり面の安定性を向上させるために,地下水の供給の抑制と間隙水圧の低下への立体排水工の効果発現に向けて,観測孔の孔内試験と地下水の水質に基づいた調査が有効と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地すべりの大きな誘因である融雪による地下水供給現象の実体解明と,それに基づいた効果的な対策計画のための基礎的知見の収集を目的として,現在地すべりの活動が認められる豪雪地帯の地区において研究を進めている。同地区では国によって調査と対策が進められており,連携することで研究を効率的に進めている。大深度におよぶ孔内検層や採水のための機材開発を行い,従来行われていなかった,単孔における深度別の水頭測定や採水を可能として地すべりに関わる要因の解明,地すべり対策事業への成果の提供を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象としている七五三掛地すべり地で大面積・大深度の活動が見られるDブロックにおける地下水の流動実態と地すべりへの影響について現地調査と観測を進めるとともに,本課題のとりまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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