2011 Fiscal Year Research-status Report
水利施設構造物と地盤との境界で生じる浸透破壊メカニズムの解明と予測手法の開発
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23580326
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岡島 賢治 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (90466805)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 浸透破壊 / 頭首工 / パイピング |
Research Abstract |
本研究は、水利施設構造物と地盤との境界に生じる浸透破壊メカニズムの解明とBligh式、Lane式の有効性の評価、及びそれらの式に代わる浸透破壊予測手法の開発を目的としている。 当該年度の成果として、研究論文に、岡島賢治,田中忠次,小松宜紘,飯田俊彰(2011),堰基礎地盤浸透破壊問題での浸透路長の有効性の再検討と弾塑性有限要素解析の適用,農業農村工学会論文集,272,pp21-29が記載された。また、本研究テーマに関連した研究成果が評価され、2012年農業農村工学会材料施工研究部会研究奨励賞を受賞した。 当該年度の研究は、模型実験を用いたスケール効果を評価することを計画していた。そこで、粒径の異なる3種の砂を用いて、堰基礎地盤をモデル化した浸透破壊模型実験及び数値解析を実施した。粒径の異なる地盤材料を用いた場合、その間隙比を各実験で統一することで地盤の密度を一定とした。これは、既往の研究により堰基礎地盤の浸透破壊は、堰下流部の土塊の重さによって浸透破壊水頭差を予測するTerzaghiの方法が有効であることが報告されていたためであり、理論的には設定した模型実験では同じ水頭差で浸透破壊が生じることを予測したものであった。しかし、模型実験の結果、破壊水頭差は地盤材料の粒径により異なり、これまで依拠していたTerzaghiの方法の有効性を否定するものとなった。当該年度はこの結果を表現しうる、新たなモデルを提案した。これらの結果は、次年度の農業農村工学会全国大会にて報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、水利施設構造物と地盤との境界に生じる浸透破壊メカニズムの解明とBligh式、Lane式の有効性の評価、及びそれらの式に代わる浸透破壊予測手法の開発を目的としている。当該年度は、スケールの異なる地盤材料による模型実験の結果、浸透メカニズムを考慮した新たな浸透破壊現象のモデル化を行い、予測手法のプロトタイプとなりうる予測式を提案することができた。 一方、新たなモデル化を行なったことにより、モデル式の検証を1次元のモデル実験より再検討する必要が生じたため、今後全体の研究計画から若干の遅れが生じることも予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当該年度スケールの効果を評価するために粒径の異なる3種の地盤材料を用いた堰基礎地盤の浸透破壊模型実験を行なった。この模型実験は、既往の研究で有効である可能性が報告されていたTerzaghiの方法が地盤材料を変えても有効であることを確認するための地盤条件を設定して行なった。しかし、模型実験の結果はTerzaghiの方法では説明できない結果となった。本研究では弾塑性有限要素法による有効応力解析で堰基礎地盤の浸透破壊メカニズムの解明に取り組んできていたが、この弾塑性有限要素法の結果もTerzaghiの方法の結果に近く、模型実験の結果を説明することができなかった。 当該年度における考察で、粒径が異なることで浸透流が流れる間隙の大きさが異なり、この間隙の大きさが大きくなる場合は、ポテンシャル差から生じる浸透力が地盤にすべて作用しないというモデル化を行なった。このモデル化により、模型実験の結果は一応の説明が可能となったが、モデル化の検証を行う必要が生じた。 また、一方で間隙径が大きくなった場合は、浸透流においてダルシー式が成立しない可能性も考えられる。ダルシー式が成立しない場合、流速とポテンシャル差の関係が線形ではなくなり、流速を増加させるのにより多くのポテンシャル差が必要となる。このため、非ダルシー領域の流速-ポテンシャル差関係を考慮すれば前述のモデル化も必要ではなくなる可能性もある。 このため、粒径と破壊水頭差の関係を明確にしておかなければ、本研究の今後の計画が遂行できない状況となった。次年度は研究計画を修正し、粒径と破壊水頭差の関係を1次元の模型実験から再検討する予定である。1次元の模型実験に関しては、限界流速法の大野らの先行研究を参考に模型実験装置を設計する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、材料の応力-ひずみ関係を明らかにするために3軸圧縮試験圧力室(1,000,000円)を計画していたが、当該年度の研究により1次元の浸透実験装置(450,000円 丸東製作所特注)を計画している。また、当該年度使用した模型実験装置において水頭差の確保が難しかった材料があったため、水頭差を大きくできるよう模型実験装置の改造費(550,000円)を計画している。設備備品費の計画が当初申請時と異なる計画となったが、本研究の目的達成のための設備備品として変更は必要不可欠であると考えている。消耗品には、地盤材料に自然河川の河床材料も検討することを計画しているため、自然河川の河床材料の地理的状況を判断するためにGISソフト(ArcView)及び大規模計算可能なデスクトップパソコン、さらに模型実験用消耗品費を計画している。旅費として、研究成果発表会および現地調査費用を計画している。その他、和文雑誌、英文雑誌への投稿を予定しており、論文投稿料を計画している。
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