2012 Fiscal Year Research-status Report
水利施設構造物と地盤との境界で生じる浸透破壊メカニズムの解明と予測手法の開発
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23580326
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岡島 賢治 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (90466805)
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Keywords | 浸透破壊 / 頭首工 / パイピング / Terzaghi法 |
Research Abstract |
本研究は、水利施設構造物と地盤との境界に生じる浸透破壊メカニズムの解明とBligh式、Lane式の有効性の評価、及びそれらの式に代わる浸透破壊予測手法の開発を目的としている。 当該年度の成果として、研究論文に、岡島賢治,東谷和輝,石黒覚(2012):堰基礎地盤の浸透破壊における粒径の影響,農業農村工学会論文集,281,pp.63-69が記載された。 当該年度の研究は、実スケールでの浸透破壊の影響を評価することを計画していた。そこで、新潟県内の堰を対象に、浸透破壊の安定計算を行った。この堰は運用中の堰で、下流エプロンに損傷を受け漏水が確認されていた。運用中の堰の浸透破壊に対する安全性評価手法は、現在存在していなかったため、漏水流量や間隙水圧計などの実測データと有限要素解析による浸透解析結果を比較しながら妥当な堰モデルを想定し、昨年度提案したTerzaghi法と弾塑性有限要素法により安全性評価を行う手法を開発した。この手法を用いて安全性評価を行ったところ、対象となる堰は現状でも安全であると評価された。 本年度の研究結果より、運用中の堰に対する浸透破壊の安全性評価手法を提案することができた。これらの結果は、H24年2月12日の三重県農業農村整備事業技術報告会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、水利施設構造物と地盤との境界に生じる浸透破壊メカニズムの解明とBligh式、Lane式の有効性の評価、及びそれらの式に代わる浸透破壊予測手法の開発を目的としている。 本年度は、スケールを変えて実スケールの堰を対象に検討を行った。スケールを変えた堰に対する安全性評価手法の提案は新たな試みであったが、ある程度の方針を示すことができた。小規模模型実験から実スケールにいたる研究方針としては、順調に研究が進行しているといえる。 しかし、昨年度、スケールの異なる地盤材料による模型実験の結果、浸透メカニズムを考慮した新たな浸透破壊現象のモデル化を行い、予測手法のプロトタイプとなりうる予測式を提案したが、このモデル式の検証を1次元のモデル実験より再検討が残されている。 本年度この課題をクリアし、本研究における最終成果としてより精度の高い予測式を提案でるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるが、大きく2つの課題に取り組む予定である。一つは、堰自体が変動する問題、もう一つは、多くの材料を対象とした浸透破壊予測式の修正である。 一つ目は、これまでの研究が堰自体を固定させた条件で検討を行っており、実際の堰や小さな特殊堤では堰基礎が浸透水圧によって移動することも考えられる。この点について模型実験と有限要素数値解析により、そのメカニズムを明らかにすると共にこれまで提案してきた修正Terzaghi法による検討を重ねたい。 二つ目は、昨年度の積み残しである地盤材料による浸透破壊の予測式(修正Terzaghi法)の修正である。既往の研究から浸透破壊が相対密度と有効径に依存していることが分かっている。しかし、1次元の大粒径の浸透破壊実験の結果がなく十分な検討がなされていない。この点について本年度さらなる検討を重ねたいと考えている。この手法としては国生ら(2010)の結果を参考に模型実験を行い検証をする予定である。 以上の結果をまとめ、水利施設の浸透破壊にたいして一定の予測式を提案できるようにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、1次元の浸透実験装置を計画している。また、所有している模型実験装置において水頭差の確保が難しかった材料があったため、水頭差を大きくできるよう1次元模型実験装置の改造費(250,000円)を計画している。設備備品費の計画が当初申請時と異なる計画となったが、本研究の目的達成のための設備備品として変更は必要不可欠であると考えている。 旅費として、研究成果発表会および現地調査費用を計画している。その他、和文雑誌、英文雑誌への投稿を予定しており、論文投稿料を計画している。
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