2011 Fiscal Year Research-status Report
気候変動で頻発が予想される中小規模の高潮災害低減技術の開発
Project/Area Number |
23580341
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
桐 博英 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所・水利工学研究領域, 主任研究員 (60360385)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 農地海岸 / 海岸堤防 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究では,気候変動の結果今後増加すると考えられる中小規模の高潮災害時の堤防の天端高不足を補うことを目的として,外水位が異常に上昇した場合に起立して越水を防ぐ,「自己起立型補助堤防(自起堤防)」を開発し,堤防改修コストの縮減と環境への負荷を軽減させるものである.23年度は,研究の初年度であり,自起堤防の設置による高潮災害軽減効果の検証とプロトタイプの設計を行った.高潮災害軽減効果の検証では,有明海内部の高潮潮位偏差のモンテカルロシミュレーションを実施し,自起堤防の高さ毎の堤防天端高不足を算出した.同シミュレーションでは,1951年から2005年までの台風経路データから日本に接近する615個の台風を抽出し,統計解析して得られた台風属性データをもとに将来の台風を推定した.シミュレーションの結果,自起堤防の起立時の高さを0.4mとした場合でも有明海湾奥部で高潮軽減効果が見込まれることが確認され,自起堤防の計画高さを決定した.なお,自起堤防の設置により生じる高潮被害軽減効果の貨幣換算は今後の課題である.有明海を対象とした高潮潮位偏差のモンテカルロシミュレーションの結果をもとに自起堤防のプロトタイプの設計を行った.プロトタイプの設計では,フロートの浮上力を利用して越波とともに起立する形式のもののほか,自起堤防堰板を2枚の薄板を合わせることで軽量でありながら強度を増す形式の2タイプを検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自起堤防の効果の検証では,モンテカルロシミュレーションによる評価を実施し,当初の見込みに近いシミュレーション結果を得ることができた.また,予定していた実験水路が使用できなかったため,23年度に自起堤防の簡易模型の試作を実施できなかったが,プロトタイプの設計は完了しており,24年度前半に模型の試作を完了できる見込みであることから研究計画に変更はなく,概ね順調に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では,23年度に自起堤防の簡易模型を製作することとしていた.しかし,東日本大震災後の海岸堤防の復旧方法を検討するため,水理模型実験を緊急に実施することが23年8月に決定し,本研究で予定していた実験水路が使用できなかった.このため,簡易模型の試作を24年度前半に実施することとし,所要経費の繰り越しを行った.24年度は,簡易模型を製作して,自起堤防の開閉機構を決定するとともに,自起堤防の1/3スケールの詳細模型を製作し,水理模型実験により動作機構を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費(直接経費)の使用計画は,以下のとおりである.自起堤防の簡易模型製作に530千円(23年度繰り越し分)自起堤防の1/3スケール詳細模型の製作に1,500千円水理模型実験補助の賃金に 200千円
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