2011 Fiscal Year Research-status Report
軟弱野菜の萎凋抑制と高速冷却を兼ね備える低温高圧ガスを用いた予冷技術の開発
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23580346
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西津 貴久 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40228193)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 低温高圧ガス / クライオスタット / 軟弱野菜 / 寒天ゲルモデル / 冷却 / 水分損失 |
Research Abstract |
1)低温高圧ガス式冷却装置の設計・試作 実験用の低温高圧ガス式冷却装置の設計指針を得るために,軟弱野菜モデルとしてスクロース入り寒天ゲルを用い,試料温度に基づく冷却制御に関する実験を行った.冷熱源を液体窒素とした実験系を試作し,20 ℃から-20 ℃まで一定速度(最大8 ℃/min)で冷却可能であることを確認した.これらの知見に基づき,「農産物冷却特性評価用クライオスタット」の設計・試作を行った.液体窒素を満たした銅製容器を冷熱源とし,試料室の壁に貼り付けた熱線を温熱源として,温度調節用コントローラーを用いて容器内温度を制御が可能である.圧力容器は2.4 L程度の内容積とし,耐圧はゲージ圧で最大1 MPaである.破裂時の安全と断熱のために真空封じ切りの断熱容器の中に圧力容器が収納される.加圧は現有のコンプレッサによる空気加圧,またはガス種に応じて高圧ガスボンベからの供給のどちらにも対応可能である.2)軟弱野菜を模した実験モデルを用いた冷却速度,水分損失量の測定 冷却速度については,前項の寒天ゲルモデルによる実験系を用いて,その測定法を決定した.一方,高圧実験の安全性を十分配慮した装置設計の結果,クライオスタットの開閉作業に極めて時間がかかることが判明した.そのため,開閉作業中に水分が変化することが十分に考えられる.当初の実験計画にはなかったが,圧力容器内での水分損失量の推定を行うために,ネットワークアナライザーを用いた反射法に基づく誘電率測定(300 MHz~6 GHz)を加圧中に行うこととした.誘電率から水分量の推定ができることは以前の研究から判明している.しかし,一般にラボ用装置は,誘電率の連続測定には向かないため,工場での検品ラインで用いられる産業用のネットワークアナライザーを用い,メーカーの協力を得て2秒程度のサンプリング速度で誘電率測定が可能なシステムを整備した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施計画の3つの項目の中で,(1)「低温高圧ガス式冷却装置の設計・試作」,(2)「軟弱野菜を模した実験モデルを用いた冷却速度,水分損失量の測定」については,測定系の開発・整備,測定法の開発を中心に計画時の目標をすべて達成した.(3)「冷却速度および水分損失の予測モデルの決定」については,計画外の水分損失量の測定系の整備を待って行ったため,一部を次年度に持ち越す結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
1)冷却速度および水分損失の予測モデルの決定 強制対流および自然対流のNu数を決定し,冷却速度の予測モデルを決定するとともに,実測データと比較してモデルの評価を行う.大気圧下で用いられる蒸散量予測モデル式における表皮抵抗の圧力依存性を実験的に求め,加圧下のモデル式を決定するとともに,実測データと比較してモデルの評価を行う.2)軟弱野菜を用いた測定,冷却速度および水分損失の予測モデルの決定 ホウレンソウと小松菜を用いて,ガス種,ガス圧,湿度,風速を種々に設定して,冷却速度,水分損失量の経時変化を測定する.また予冷後のL-アスコルビン酸含量,アスコルビン酸オキシダーゼ活性,呼吸商の経日変化の測定,一定期間後の黄化や腐敗程度の評価を行う.また組織の顕微鏡観察により,加圧による損傷の有無を確認する. 1)項で用いたモデルを測定データに適用し,ホウレンソウと小松菜に関する予測モデルを決定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に試作した「農産物冷却特性評価用クライオスタット」が重量物であり,操作に人手と時間がかかる.実験の効率的かつ効果的な遂行を企図して,クライオスタットをジャッキアップできる専用架台(200,000円)を製作する.これに加えて,酵素活性測定の試薬,ガスクロマトグラフ用のガスなどの消耗品などを考慮した物品費として300,000円を見込んでいる.それ以外に,成果発表のための旅費(133,000円),実験補助の謝金(37,000円),その他(30,000円)を見込んでいる.
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