2011 Fiscal Year Research-status Report
将来の泌乳と繁殖に関わる子牛のIGF-1産生能の決定因子の解明と人為的制御の検証
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23580363
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
川島 千帆 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (20374770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木田 克弥 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70419216)
清水 隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90375113)
白砂 孔明 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (20552780)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 乳用牛 / 一塩基多型 / IGF-1 / GH受容体 / 繁殖 / 代謝 |
Research Abstract |
本研究の目的は、乳牛における乳生産や卵巣機能に重要な肝臓でのインスリン様成長因子-I(IGF-1)産生能の決定要因を遺伝形質および飼養管理の観点から検討することである。H23年度は、すでにIGF-1産生能が決定していると予測される春機発動前の4ヶ月齢乳用雌子牛へのEB投与における血中IGF-1濃度増加率とIGF-1産生や卵巣機能および乳生産との関連性が明らかとなっているGH、GH受容体およびIGF-1の遺伝子多型との関連性を調査するために下記の2つの試験を中心に試験を実施した。また、「春機発動前の子牛へのEB投与におけるIGF-1産生能と乳腺および卵巣の局所IGF-1システムと乳腺発育との関連性」を検証するための乳腺および卵巣組織採取については、今年度に実験対象として適切な牛がいなかったため、H24-25年度に行う。1.4ヶ月齢乳用雌子牛へのEB投与試験;4ヶ月齢雌子牛(体重約120kg)に対し、成牛の発情時のレベルに相当するエストラジオール400μgの安息香酸エストラジオール製剤を筋注し、投与前と投与24時間後の血液から、IGF-1およびエストラジオール濃度と健康状態把握のために代謝物濃度を測定する。現時点で60頭のサンプリングが終了し、現在血中IGF-1濃度を測定している。2.遺伝子多型解析;上記の実験時に採取した血液からDNAを抽出し、遺伝子多型解析を行う。現在、60頭の牛の血液を遺伝子解析用に処理した。そして、遺伝子解析のターゲットとする遺伝子多型を絞るため、過去の研究報告で血中IGF-1濃度または分娩後の卵巣機能回復に関与することが明らかとなっている4つのGH受容体の一塩基多型において、初産牛の繁殖成績および泌乳成績との関連性を解析し、その中の2つのGH受容体の一塩基多型と繁殖成績との関連性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のH23年度に予定していた実験計画はおおむね順調に進んでいる。まず、春機発動前の4ヶ月齢乳用雌子牛へのEB投与における血中IGF-1濃度増加率と遺伝子多型との関連性を解析するための「4ヶ月齢乳用雌子牛へのEB投与試験」と「遺伝子多型解析」の2つの実験においては、全て予定通りに遂行している。次に「春機発動前の子牛へのEB投与におけるIGF-1産生能と乳腺および卵巣の局所IGF-1システムと乳腺発育との関連性」の検証については、実験対象に適切な牛がいなかったために本年度は遂行できなかったが、H24-25年度の実験計画に含まれているため、問題ないといえる。また、この実験が遂行できなかった分、遺伝子解析においてターゲットとする遺伝子多型を絞るための解析を行った。その結果、2つのGH受容体の一塩基多型と繁殖成績との強い関連性が示された。この解析結果により、今後の実験遂行の効率が上がることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24-25年度も今年度行った実験を引き続き行う予定である。これらに加え、H24年度はIGF-1産生能に関わる新しい遺伝子変異部位を同定するために、4ヶ月齢子牛へのEB投与による血中IGF-1濃度増加率が高い牛(上位約10%)と低い牛(下位約10%)を対象に、GH、GH受容体およびIGF-1の塩基配列を解析する予定である。そして、新しく特定された遺伝子多型については、4ヶ月齢でのEB投与試験を行った牛全頭に対して血中IGF-1濃度増加率との関連性を確認する。また、H25年度には、H23-24年度の実験に加え、出生後の飼養管理方法が肝臓でのIGF-1産生に及ぼす影響を検証するため、哺乳期の栄養水準を変更し、哺乳期間の血中IGF-1濃度やその後のIGF-1産性能への影響(EB投与試験により検証)を解析する予定である。現在の実験予定はこのようになっているが、実験牛の確保状況により、各実験の順序が入れ替わる可能性もあるが、残り2年間で遂行可能であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費;H24年度の研究費は主に既知(60万円)あるいは未知(60万円)の遺伝子多型の同定に使用する(計120万円)。また、H23年度にサンプリングを行った牛の血中代謝産物濃度測定がまだ全て終わっていないため、H23年度の残額(23,875円)も含め、その測定費用に充てる(計73,875円)。残りの研究費は、EB投与試験の試薬(1万円)、採血道具(1万円)、DNA抽出(3万円)、そしてIGF-1を含めたホルモン濃度測定(10万円)に充てる。旅費;H23年度の研究成果を7月にカナダ(バンクーバー)で開催されるInternational Congress on Animal Reproductionで発表予定であり、H24年度前半までの研究成果を3月に広島で開催される日本畜産学会で発表予定である。各成果発表の旅費として50万円を考えている。その他;国際誌への論文投稿に必要な英文校閲料や投稿料として5万円を予定している。
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