2012 Fiscal Year Research-status Report
将来の泌乳と繁殖に関わる子牛のIGF-1産生能の決定因子の解明と人為的制御の検証
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23580363
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
国友 千帆(川島千帆) 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (20374770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木田 克弥 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70419216)
清水 隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90375113)
白砂 孔明 自治医科大学, 医学部, 助教 (20552780)
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Keywords | 乳用牛 / 一塩基多型 / IGF-1 / GH受容体 / 繁殖 / 代謝 |
Research Abstract |
H24年度は、昨年度から継続していた4ヶ月齢の乳用雌子牛への安息香酸エストラジオール製剤(EB)投与による血中IGF-1濃度の変動についての試験が終了し、血中IGF-1濃度や各個体の成長ホルモン受容体(GHR)の一塩基多型(SNP)等の解析を全て終えた(n=71)。その結果、既知のGHR-SNPのうちの1つにおいて、EB投与により野生型では血中IGF-1濃度が増加することに対し、変異型では血中濃度は増加せずにIGF-1産生を促すGHの血中濃度上昇のみが確認された。このSNP部位はプロモーター領域であることから、変異型を持つ牛はIGF-1産生効率が悪い可能性が考えられた。 また、哺乳子牛に代用乳の給与量を増やす強化哺育も行った(強化哺育牛10頭、対照牛13頭)。その結果、哺乳日数は変わらないが、強化哺育により離乳時体重は有意に重くなった。加えて哺乳期間の血中IGF-1濃度は両群間に差はなかったが、4ヶ月齢時に上記と同様のEB投与試験を行った結果、強化哺育牛の方がEB投与前の血中IGF-1濃度が高く、さらにEB投与によって著しい血中IGF-1濃度の増加が確認された。 以上よりH24年度の実験結果から、乳牛においてIGF-1産生に関わるGHRの機能の違いをもたらすGHR-SNPが特定されたこと、しかし哺乳期の管理によってはGHR-SNPに関係なくIGF-1産生能を高められる可能性があることが示された。また、今年度計画に入っていた「乳腺および卵巣の局所IGF-1システムと乳腺発育との関連性」を検証するため、2頭の育成牛から乳腺組織のサンプリングを行い、GHR-SNPを解析したが、採取部位によって抽出できるRNA量の差が大きく、データが安定しなかった。そのため、局所のIGF-1システムについては、H24年度の研究成果も踏まえ、実験内容を少し修正し、H25年度に明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、H23-24年度に予定していた実験計画はおおむね順調に進んでいる。 まず、H23年度から継続の春機発動前の4ヶ月齢乳用雌子牛へのEB投与における血中IGF-1濃度増加率と遺伝子多型との関連性を解析するための「4ヶ月齢乳用雌子牛へのEB投与試験」と「遺伝子多型解析」、H24年度に計画していた「強化哺育によるIGF-1産生能の人為的制御」の実験においては、全て予定通りに遂行し解析も終えた。 H24年度に計画していた「新しい遺伝子変異部位の同定」に関しては、今回解析したGHR-SNPのうちの1つにおいて、IGF-1産生に関わるGHRの機能に違いをもたらす可能性が考えられ、乳牛において、このような研究成果は報告されていないことから、このSNPにターゲットを絞ることが優先であると判断し、その解明に重点を置く事で、研究目的に合った結果が得られると考えられる。 次に「乳腺および卵巣の局所IGF-1システムと乳腺発育との関連性」の検証については、サンプリングの安定性やデータ精度から当初の計画では遂行が難しいと考えられたが、H24年度の研究結果も踏まえ、実験内容を少し修正することでGHR-SNPの違いによる局所のIGF-1システムへの作用も明らかに出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度はH23-24年度の研究成果から、1つのGHR-SNPの機能解明にターゲットを絞り3つの実験を行う。 ①IGF-1産生能の違いの証明;と畜場から収集した卵巣の大卵胞からIGF-1産生が行われている卵胞膜細胞を回収し、個体別に培養を行い、GH添加後のIGF-1mRNA発現量および培養液中のIGF-1濃度を解析する。これによりGHR-SNPの違う牛のIGF-1産生能を明らかにする。 ②IGF-1産生能の人為的制御の可能性;強化哺育試験をした牛がH25年度に初産を迎えるため、それらの牛の分娩後の代謝状態、繁殖機能回復や乳量を調査し、子牛の時に飼育管理方法を変えることで高められたIGF-1産生能がその後も維持するのかを検討する。 ③GHR-SNPの違いが乳量や繁殖成績に及ぼす影響の調査;経産牛において、今回ターゲットにするGHR-SNPの違いが分娩前後の代謝状態および繁殖性、乳量にどのような影響を与えるのかを詳細に調査する。 以上の3つの実験をH25年度に進めることで、研究目的に合った成果が得られると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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