2011 Fiscal Year Research-status Report
動揺病の制御により家畜の輸送ストレスを軽減する試み
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23580365
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90282384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 昭栄 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50154472)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動揺病 / 輸送ストレス / ヤギ / 家畜 / 脳幹 / 悪心 |
Research Abstract |
輸送によりヤギの脳幹に発現するc-Fosタンパク質の分布:悪心を伴う嘔吐反射には、脳幹が深く関わることが明らかとなっている。トラック輸送によりヤギの脳幹における反応部位を、神経細胞活動のマーカーとなるc-Fosタンパク質の発現を指標として検討した。その結果、対照区(トラックの荷台に載せたが走行はしなかった区)に比べ、1時間のトラック輸送を行なった輸送区の方がc-Fosタンパク発現細胞数が多かった部位は孤束核(悪心に関わる部位)および前庭核(半規管から平衡感覚の情報を受け取る部位)であった。これらのことから、ヤギにおいても、輸送により動揺病と似た反応が起こることが示唆された。輸送時のヤギの自律神経系活動の検討:動揺病の発生には自律神経系の関与が報告されている。トラック輸送に対する自律神経系の反応を心電図解析により検討した。その結果、輸送中はヤギの心拍数が低下し、R-R間隔変動高周波成分が増加した。このことから、輸送は、副交感神経系の活動を優位にすることが示唆された。 催吐剤投与に対する血中ペプチドYY濃度の反応:イヌにおいて、催吐作用のある抗癌剤、シスプラチンを投与すると、嘔吐に同調してペプチドYY(PYY)の血中濃度が増加する。ヤギにおいて、PYYが悪心の生理学的指標となり得るか否かを検討した。その結果、シスプラチン投与により、動きが少なくなり、採血のために近づいても逃げないなどの様子が見られた。しかし、血中PYY濃度に変化は観られなかった。このことから、少なくともヤギにおいては、PYYは悪心の指標とはなり得ないことが明らかとなった。 ウシの輸送ストレスにおける幌の有無の検討:子ウシを用い、1時間の輸送時の、幌の有無の影響ついて検討した。その結果、幌の有無によって行動や血中コルチゾル濃度の増加の程度に顕著な違いはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定より遅れているが、この最大の原因は3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)とそれに伴う計画停電の影響で、実験を23年度の初期には始められなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の2つを重点的に進める。脳幹におけるc-Fosタンパク質発現を指標とした動揺病の検討:神経細胞活動のマーカーであるc-Fosタンパク質発現を指標とし、ヤギの脳幹においてトラック輸送により反応する部位を特定できた。今年度は、これらの反応が実際に動揺病発生と関連するものなのかどうかを確認するため、例えば動揺病を抑制する薬(ジフェンヒドラミンなど)の投与によりc-Fosタンパク質の発現がどう変化するかを確認する。さらに、悪心を感じているか否かを検討するため、シスプラチン等の催吐剤に対するc-Fosタンパク質の発現を検討し、輸送による反応と比較検討する。悪心を示す生理的指標の検討:ペプチドYYが悪心の指標とはなり得ないことが分かった。今後は、ヒト等において、やはり嘔吐と血中濃度との関連が報告されているアルギニンバソプレッシンとコレシストキニンについて、その影響を検討する。これについては、現在研究協力者の藤平が進め始めている。また、心電図の解析より自律神経系の反応を観察する手法についても進める。研究遂行における課題とその対応:研究分担者の杉田昭栄が宇都宮大学の農学部長を務めることになったため、本研究に割ける時間が少なくなった。さらに、本研究を修士論文のテーマとする院生は、今年度はいない。これに対応するため、本テーマを修士論文や博士論文のテーマとしない院生においても、技術的には類似した方法を使っている者を実験補助として雇用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度からの繰り越しが200,000円余りあり、今年度は直接経費が総額で1,400,000円となる。特に高額な設備備品を購入する予定はない。加速度計150,000円、試薬類400,000円、ガラス・プラスチック機器60,000円、記録媒体10,000円、動物とその飼料等200,000円、国内旅費50,000円、海外旅費200,000円、謝金200,000円、その他30,000円を目安に使用する。当初、ウシやウマの輸送時の採材の旅費に当てる計画であった100,000円を謝金とし、今年度重点的に行う上述の2テーマ遂行のための人件費とする。なお、上述の計算では100,000円余るが、余剰は来年度に回す。
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Research Products
(3 results)