2013 Fiscal Year Research-status Report
動揺病の制御により家畜の輸送ストレスを軽減する試み
Project/Area Number |
23580365
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90282384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 昭栄 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50154472)
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Keywords | 動揺病 / ヤギ / 輸送ストレス / 悪心 / ジフェンヒドラミン / シスプラチン |
Research Abstract |
輸送により家畜が乗り物酔い(動揺病)を発症するか否かを証明するための研究を行なっている。これまでに、輸送中のヤギの異常行動が、動揺病軽減効果のあるジフェンヒドラミンの投与で、この輸送中の行動的反応が軽減されることを見出している。 ヤギを繰り返し輸送することによる輸送中の生理学的・行動学的変化:平成24年度からの続きで、この行動学的反応を含めた幾つかの項目が、輸送の経験によって変化するか否かを検討した。輸送経験のないヤギを8回輸送した結果、ストレスホルモンであるコルチゾルの血中濃度は、輸送中は変わらず顕著に増加した。しかし、輸送が終了し、畜舎に戻った後には、2回目以降は初回よりも早く元の値に戻った。このことから、ヤギは輸送を経験することによって輸送を学習し、ある程度これに慣れる可能性が示された。 シバヤギの脳幹のより詳細な脳地図の作成:動揺病あるいはその他の悪心(気分が悪いこと)の誘起には、脳幹、特に延髄に分布する幾つかの神経核が関わることが分かっている。平成23年度にシバヤギの延髄の簡単なアトラスを作成したが、検討する例数を増やし、さらに詳細なアトラスの作成を行なった。その結果、孤束核はさらに幾つかの亜核に分けられた。 トラック輸送によりヤギ脳幹に発現するc-Fosタンパク質の分布とそれに及ぼすジフェンヒドラミンの効果:平成23年度に、トラック輸送によりヤギの延髄の複数の神経核において、神経細胞活動のマーカーとなるc-Fosタンパク質の発現が増加することを示した。これが、上述したジフェンヒドラミンにより減少するか否かを検討している(現在、解析中である)。 催吐剤によりヤギ脳幹に発現するc-Fosタンパク質の分布:悪心を誘起する副作用のある抗癌剤シスプラチンをヤギに投与し、脳幹に発現するc-Fosタンパク質の発現を観察し、その結果を輸送のものと比較している(これも現在解析中である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定より遅れている理由は、主に2つある。1)本研究がスタートした平成23年には、3月11日に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生している。震災の直接の影響と、それに伴う計画停電等の影響により、本研究のスタートが当初の予定よりも遅れたこと。2)研究協力者の藤平篤志が、24年度に獨協医科大学から現職の日本獣医生命科学大学に転出したため、研究が一時中断したこと。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定を1年延長した26年度は、以下のように研究を進める。 脳幹におけるc-Fosタンパク質発現を指標とした動揺病の検討:昨年度からの継続である。c-Fosタンパク質発現を指標として特定できた、ヤギの脳幹においてトラック輸送により反応する部位が、実際に動揺病発生と関連するものなのかどうかを確認するため、ジフェンヒドラミンの投与によりc-Fosタンパク質の発現がどう変化するかを確認する。さらに、悪心を感じているか否かを検討するため、シスプラチン等の催吐剤に対するc-Fosタンパク質の発現を検討し、輸送による反応と比較検討する。 「嘔吐しない生物における悪心を感じていることの証明」は、当初考えていたよりも難しく、上述したジフェンヒドラミンにより輸送中のヤギの行動が変化する結果は、論文として国際誌に投稿したが、「ヤギが動揺病を発症する根拠が不充分」ということでRejectされた。1本の論文だけで証明しようとせずに、個々の事象を、根拠となるデータを取りながら、丁寧に進めて行く方針に変えようと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請した本研究は、当初は25年度が最終年度であったが、1年の延長を申請し、認められた。延長した理由は、初年度の2011年の3月に発生した東日本大震災、その後の計画停電などにより、研究の開始が大幅に遅れた。そのため、最終年度であった25年度においても当初の予定より数ヶ月の遅れがあったためである。 酔い止め薬を投与しトラック輸送したヤギについて、また、副作用で吐き気を発現する抗癌剤を投与したヤギについて、その延髄における反応部位を、c-Fosタンパク質(神経細胞活動のマーカー)の分布により検討する。次年度使用額は、主にその実験のための試薬類、ガラス機器やプラスチック機器、また、実験動物とその維持費として使用する。
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Research Products
(2 results)