2012 Fiscal Year Research-status Report
栄養処理による食肉の呈味制御:遺伝子発現及びメタボローム解析による高品質化
Project/Area Number |
23580366
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤村 忍 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20282999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 基二 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90126029)
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Keywords | 食肉 / 呈味 / アミノ酸代謝 / メタボローム / 遺伝子発現 / グルタミン酸 / リジン / サッカロピン |
Research Abstract |
食肉の高品質化の中で呈味の向上に対する期待は大きいが、熟成保存中の成分変化を除き、呈味成分量の調節に関する有効な情報は極めて不足している。本研究は、食肉高品質化のため、飼料栄養素の調節による食肉呈味向上を図ることを目的とし、そのモデル家畜のグルタミン酸(Glu)及び関連アミノ酸の代謝メカニズムを解析し、次いでメカニズムを考慮した食餌栄養調節による高品質食肉の作出を目的とする。この解析にメタボローム、遺伝子発現解析等を用いた。モデルとした飼料リジン(Lys)を0.5%添加した飼料を10日間給与することにより、筋肉遊離Glu量を有意に増加させたブロイラーのメタボローム解析の結果、肝臓のみでなく筋肉でもサッカロピンやピペコリン酸(PA)系によるLys異化が生じた。肝臓における知見から、サッカロピン系のLys異化では2モル、PA系では1モルのGluが生成され、筋肉でも遺伝子発現やメタボロームで異化が確認されたことから、両者またはいずれかがGlu産生に寄与したことが示された。飼料へのPAを添加した検討から、PA系の関与はサッカロピン系よりも小さい可能性が示された。また高Lys飼料給与で、筋肉でLysの構造類似物質が増加し、β-Ala-Lysも増加した。その一方でβ-Ala-His(カルノシン)が減少する可能性が示されたが、これは食餌性Hisレベルの調整で高レベルを維持できることが明らかとなった。また食餌性BCAAによる筋肉Glu増加では、低ロイシンによるGlu増加が、吸収時のBCAA拮抗の結果として血漿Valの増加を介して生じた可能性を得た。これらの成果の一部は日本畜産学会等での11件の学会発表、国際アミノ酸科学協会セミナー等での3回の招待講演で公開した。また特許を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要で示した様に、Lys給与動物のメタボローム解析より、筋肉でサッカロピン及びPA系によるLys異化が生じている可能性を得たが、さらにPA系の関与の比率の検討に入り、その寄与は低い可能性を見出すことができた。またBCAAによる筋肉Glu量調節においては、吸収時のBCAA拮抗が関与する可能性を得ることができた。いずれもこれまでの知見と異なり、本研究課題の目的である飼料栄養素による筋肉でのGlu増加メカニズムの一端を明らかにすることができた。これらは当初の目的を十分に達成して展開している。またこれまでの成果から、新たな研究の展開が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を基盤に、メタボローム及び遺伝子発現解析、酵素活性の検討等を用いて飼料アミノ酸の給与に伴う筋肉Glu量の増加メカニズムの解明を進める。特にLysによる代謝のより詳細な解析、BCAA間で異なるGlu調節能についての代謝調節メカニズムの解析の検討を進め、食肉の効率的な食味向上のための条件を明らかにする。またLys及びHisによるβ-Ala-His(カルノシン)調節の最適バランス、また他の代謝物質量の調節による呈味効果を考慮し、食餌性成分による食肉の高付加価値化、特に美味しさの向上を効率的に実現するための研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、飼料成分により筋肉中Glu量を増加させ、そのモデル肉(肉用鶏)の代謝メカニズムを検討し、飼料による食肉の呈味調節機構を明らかにするものであるが、動物飼育に必要な恒温飼育室及び飼育設備、呈味成分の抽出のためのホモジナイザー、成分測定のためのHPLC、全自動アミノ酸分析機及びタンパク質の遺伝子発現解析に関するリアルタイムPCR等の機材は全て整っている。よって主な研究費は消耗品費である。次年度に使用する予定の交付金は4月当初からの試験のための消耗品購入のために使用するものである。具体的な計画は次の通りである。Lys、BCAA及びHis量を調節した飼料を調製し、特定アミノ酸給与による遊離Glu増加筋肉を作出する。作出したモデル動物の筋肉について、Glu及び代謝関連生成物量をCE-MS/MS等によりメタボローム解析し、次いでGlu合成及び分解に関与する酵素タンパク質のmRNA遺伝子発現とGlu量の相関解析を行う。上記は主に研究代表者が担当する。研究分担者はアミノ酸定量の部分を担当し、またGlu量と代謝関連酵素の発現解析の結果に基づく一連のアミノ酸代謝について代表者とともに解析を行う。またEuropean Symposium of Poultry Nutrition(ドイツ)等での研究発表と論文投稿を計画している。旅費は学会発表及び情報収集を目的とし、謝金等の研究補助は実験動物管理に対する謝金である。
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